日本一パンの消費量が多いまち・大津市で、パン作りに関わる人や店を紹介します。
2016~2018年の食パンとそのほかのパンの合計消費量が47都道府県の県庁所在地と指定都市の中で大津市が1位になり、年間の平均消費量は55.6キロで全国平均を24%上回っています。(総務省家計調査)
JR比叡山坂本駅の改札出てすぐにある「An deux(アンドゥー)」が目指すのは、「毎日食べられるパン」です。
毎日食べても飽きないパンを
駅改札から出て10歩ほど。学生やサラリーマン、地域の人でにぎわうパン店「An deux」。店名の「アンドゥー」は、店主の安藤克記さんの名前から付けられました。
「友人と一緒に西武百貨店で働きたい」と百貨店内のパン店で働き始めた安藤さんでしたが、パンのコンテストに出品するなど真剣にパンと向き合い、「パンの奥深さ」を知る先輩の姿を見るうちに、「気軽な気持ちはなくなり、パンを極めたいと思うようになった」と振り返ります。
知り合いの紹介で比叡山坂本駅前のパン店跡を引き継ぎ、2013(平成25)年5月29日に「An deux」をオープンしました。
安藤さんがこだわっているのは、「毎日食べられるパン」であること。パンの種類によって6種類の小麦粉を使い分け、イーストフードなどの添加物を使わずに生地を作っています。「毎日食べるために、味が濃くなりすぎないように」と、少し塩分を控え、バターの種類にもこだわり、しつこくなりすぎず、飽きないパンを目指しているそうです。
カレーパンコンテスト入賞の「比叡の山椒香るカレーパン」
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年。安藤さんは「駅前から人が消えた」と振り返ります。「時間もあるので、先輩たちが一生懸命に取り組んでいたコンテストにチャレンジしてみよう」と思った安藤さんは、日本パンコーディネーター協会主催の「カレーパンNo.1コンテスト」に出品しました。
安藤さんが作った「比叡の山椒香るカレーパン」は、見事に審査員特別賞を受賞しました。叡山坂本には、春先に比叡山に芽吹く山椒の新芽を佃煮にした郷土料理があります。地元の伝統にちなんでサンショウ入りの自家製カレーをキューブ型のパンに入れたカレーパンを作りました。安藤さんは「少しでも地元に恩返しができればとの思いで応募した」と振り返ります。
種類豊富なフランスパンのサンドイッチ
「アボカドとエビ」「あんバター」「マロングラッセ」など、フランスパンのサンドイッチは種類が豊富。フランスパン生地に野沢菜を練り込み、ツナサラダを挟んだものや、胚芽のフランスパンにピスタチオクリームを挟んだものなど、フランスパンの生地にも工夫を施しています。予約制でサンドイッチがセットになったランチボックスも販売しています。
食感を味わうパン
あんパンなどの菓子パンには、時間がたってもフワフワの食感を維持するために、酒種(さかだね)酵母を使っています。安藤さんは「保育園にも納品しているので、添加物を使わずに、冷めてもフワフワのまま食べられる工夫をしています」と話します。
食パンはサクサクとした食感のパンドミーと、モチモチした食感の湯種食パンを販売しています。ラスクも「カリカリ」と「サクサク」の2種類。生地を変えて食感に違いを出し、低温で長い時間じっくり焼き上げています。
食べ応えのあるフランスパン、フワフワとした菓子パン、食感の違いを味わう食パンとラスク。材料、焼き加減などにこだわり、食感を楽しめる工夫を施しています。
店内にはイートインスペースもあり、安藤さんは「ちょっと話をして、パンを食べて、ゆっくりと過ごせるパン屋さんでありたい」と話します。
An deux(アンドゥー)
滋賀県大津市坂本3丁目31−44
TEL:077-578-3700
定休日:日曜日
営業時間:7:30~19:00
取材・文・撮影=山中輝子