大津市の特産品「大津百町百福物語」は2015(平成27)年に大津商工会議所が始めた認定制度で、現在までに47点が認定を受けています。
大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に、「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開しています。
自家栽培の小豆で作る和菓子
第8回は茶菓(さか)山川(大津市長等)の「餅小豆」。店主の山川誠さんに話を聞きました。
大津の町に昔からある丸屋町、菱屋町、長等の3商店街を総称して「ナカマチ商店街」と呼んでいます。ナカマチ商店街のアーケードの中にある「茶菓 山川」は、大津市内の和菓子店で43年間修業した山川さんが独立して2017(平成29)にオープンした和菓子店です。
山川さんが大切にしているのは和菓子に使う材料。小豆は高島市の畑で自家栽培し、水は比良の湧き水。もち米も滋賀県産の滋賀羽二重もち米を使っています。小豆の畑は土を耕し、播種から収穫まで山川さんと家族で担っています。山川さんは「今年は小豆の生育が遅く、11月末までずれ込んだので臨時休業をして収穫しました。立命館大学の学生が収穫を手伝ってくれて助かりました」と振り返ります。
「餅小豆」は大粒の大納言小豆を炊き上げたあんを、もち米で作ったなめらかでコシのある求肥で包み仕上げます。食感のアクセントに塩ゆで小豆とクルミを入れています。「シンプルだからこそ、小豆の味を堪能してもらえる」と、オープン時から「店のコンセプトを表現した和菓子」として店頭に並んでいます。
ほかにも、「小豆の味を知ってもらいたい」と、あんをわらび餅で包んだ「本わらび」やチーズ味のクッキーにあんをのせて食べる「餡上(あんじょう)」など、自家製の小豆を使った菓子を提供しています。
季節の和菓子
「ふるーつ葛(くず)餅」は、冬から春はイチゴ、夏はイチジク、秋はシャインマスカットなど山川さんが農園に出向いて選んだ季節の果物を使います。「果物がよりみずみずしくなり、素材の味を楽しんでもらえるように」と、フルーツ大福ではなく、くず餅で包んで仕上げています。
季節の和菓子として、冬にはそば粉と山芋の生菓子「冬柴」や、大地に雪が積もる風景を表した「雪の舞」、干し柿と栗あんを合わせた「柿喰(く)へば」などが店頭に並びます。山川さんは「見て、味わって、季節を感じてもらえれば」と話します。
店内にはイートインスペースも。「修業時代には食べている人の姿を見ることができなかったので、自分の店を出すときにはイートインできる店にしたいと考えていました。目の前で食べて『おいしい』と言ってもらえることがうれしいです。菓子を通して縁が生まれる店にしたい」と笑顔を見せます。
茶菓 山川
滋賀県大津市長等2-10−5
TEL 077-527-0088
営業時間 10時~18時
定休日 月曜・火曜・水曜(日曜は不定休)
取材・文=山中輝子