大津市の特産品「大津百町百福物語」は2015(平成27)年に大津商工会議所が始めた認定制度で、現在までに53点が認定を受けています。
大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に、「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
骨まで柔らかい鮎の甘露煮
第13回は魚重産業(大津市逢坂)の「鮎(あゆ)の甘露煮」です。
魚重産業は1921(大正10)年に琵琶湖の魚の問屋として創業しました。京都の料亭に鮮魚を卸す中で、料亭からの依頼で湖魚の加工を始めました。料亭で修業し習得したのが「鮎の甘露煮」。その後、注文が増え、独自の味付けにアレンジして料亭への提供だけでなく、販売も始めました。
魚重産業の「鮎の甘露煮」は、琵琶湖の柔らかいアユを仕入れ、少し焼いて余分な脂を抜き、鍋で2~3時間水炊きをしてあくと臭みを取ります。2回水を入れ替えてあく抜きをしたら、調味料に漬け込んで一晩寝かせ、翌日に3~4時間かけて煮詰めます。
魚重産業の今井崇人さんは「2日間かけて作る甘露煮は、頭も骨も尾も柔らかく、丸ごと1匹食べることができます。昔から近所の人に愛されている味です」と話します。
コロナ禍で始めたネット販売では、県外からのリピート注文もあるそうです。
琵琶湖のアユが柔らかい理由
夏から秋にかけて川で生まれた稚アユは琵琶湖で育ち、春になると川へ遡上(そじょう)するアユと、琵琶湖で生息するアユに分かれます。川に遡上したアユは苔などを食べて20センチほどに育ちますが、プランクトンを食べる琵琶湖のアユは10センチほどにしか育たず、「コアユ」と呼ばれます。コアユは骨も身も柔らかく、天ぷらやつくだ煮にして丸ごと食べることができます。
今井さんは「琵琶湖で育ち、養殖場で大きくしたアユは同じ大きさでも身も骨も柔らかく、全国の高級料亭から需要があります。店では、琵琶湖で育ち養殖場で大きくしたアユを使い、2日間かけて甘露煮にするので、より柔らかく仕上がります」と話します。
「鮎の甘露煮」は大津駅観光案内所(大津市春日町)と魚重産業で販売。今井さんは「最近ではネットで調べて買い求めに来てくれる観光客もいます。甘露煮はほかでもありますが、琵琶湖のアユは特別。特徴的なアユを使った伝統食なので、ほかの地域の人にも知ってもらいたい」と話します。
魚重産業
滋賀県大津市逢坂1-12-21
TEL 077-522-3175
営業時間 9時~17時
日曜・祝日定休
取材・文=山中輝子