大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
2015(平成27)年に大津商工会議所が始め、現在までに53点が認定を受けています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
コーヒーの香りが口の中に広がるようかん
第17回は大津市歴史民俗博物館(大津市御陵町)に隣接する大津市立市民文化会館内にある「Cafe Restaurant Inti(カフェレストラン・インティ)」のコーヒーようかん「珈福(こうふく)」です。
コーヒーようかん「珈福」は、スペシャルティコーヒーの生豆を自家焙煎(ばいせん)し、コーヒーミルでひき、ハンドドリップしたコーヒーを1時間煮詰めて作ったコーヒーエキスを使って作ります。
寒天、水あめ、砂糖、こしあんのみで作ったようかんの鍋に通常の10倍以上の豆で作った濃厚なコーヒーエキスを入れ、焦がさないように2時間炊き上げ、型に入れて固めると、甘さ控えめで食べると口の中にコーヒーの香りが広がるコーヒーようかんの出来上がりです。
「コーヒーとおいしいもので幸せになってもらいたい」と、「珈福」と名付けました。
店主の荒川孝男さんが「コーヒーようかんを作りたい」と思い始めたのは2021年。「地元の和菓子店にお願いしたい」と、「御菓子司 金時堂」(大津市本堅田2)に製造を依頼しました。荒川さんは「金時堂社長の山本伸一さんに最初に話をしたときは、『コーヒーようかんなんて聞いたことがない』と言われましたが、『チャレンジしてみよう』と協力してくれました」を振り返ります。
手間がかかることから、閉店後にしか作れないという「珈福」。閉店後の金時堂に甘いようかんの香りとコーヒーの香りが漂います。
コーヒーへのこだわり
インティがオープンしたのは2020年。荒川さんが定年後の第2の人生として選んだのが喫茶店の経営でした。丘陵地にあり、太陽が降り注ぎ、琵琶湖に架かる虹がよく見えることから、インカ帝国の太陽神、虹の神「インティ」から店名を付けました。
コロナ禍でのオープンとなり、大津市歴史民俗博物館の来場者も減り最初は集客に苦労したとのこと。窓からは春には桜、秋には紅葉、背景には琵琶湖も見えるロケーションの良さとコーヒーの味で徐々に口コミやSNSで広まり、今では多くの人が訪れるようになったそうです。
インティで提供しているのはスペシャルティコーヒー。「どこで」「だれが」「どんな方法で」作ったのかが分かるコーヒー豆です。すっきりとした口あたりのブラジル ブルボンや野性味豊かな甘くフルーティな香りと酸味が特徴のモカマタリ バニーマタルなどのストレートコーヒー14種のほか、オリジナルブレンドのコーヒーも提供しています。
琵琶湖をイメージし、「口当たりの良さと後口に広がる優しい酸味とフルーティな甘味が特徴」だという「びわ湖ブルー」や、コーヒーが発見されたとされるエチオピアとイエメンのモカ品種をブレンドした「珈琲(コーヒー)発見伝説」など5種類のオリジナルブレンド。
自家焙煎し、ハンドドリップしたいれたて、ひきたて、いれたての香り高いコーヒーを提供しています。
コーヒーようかんを大津の名物に
試行錯誤して作ったコーヒーようかん「珈福」には、パッケージには大津市に伝わる民俗絵画「大津絵」のどこかユーモラスな鬼の絵が描かれています。
大津絵は江戸時代に東海道の大津宿で土産として売られていた民画で、仏画から始まったとされています。時代が進むと共に世俗画となり、風刺やなどが描かれ、浮世絵と並ぶ日本二大民画として親しまれていました。
荒川さんは「大津名物、大津の土産として広まってほしいと大津絵のデザインを採用しました。大津の商店街の中で生まれ育ったので、地元に貢献したいです」と話します。
土産としての販売だけでなく、コーヒーようかん「珈福」とコーヒーなどのドリンクのセット(660円)やコーヒーようかんパフェ(680円)も提供しています。
Cafe Restaurant Inti(カフェレストラン・インティ)
大津市御陵町2番3号 大津市立市民文化会館1階
電話番号:077-599-4570
営業時間9時~17時(9時~11時モーニング、11時~13時50分ランチ、14時~17時カフェ)
定休日:月曜(祝日の場合は営業、翌日休み)
取材・文=山中輝子