大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
2015(平成27)年に大津商工会議所が始め、現在までに55点が認定を受けています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
缶に入ったガトーショコラ
第21回は「佐知’s Pocket」(大津市小関町)のガトーセレクトと「お寺の万能味噌(みそ)」です。
直径10センチの丸い缶の中に入ったガトーセレクトは、チョコレートを練り込み焼き上げたガトーショコラの上にローストしたナッツをトッピングした「ショコラ」、バターケーキにカシスの生チョコなどを飾った「フラワリー」、ホワイトガナッシュに4年間ブランデーに漬け込んだドライフルーツをトッピングした「ドライフルーツ」など6種類。
スズランや少女の横顔などが描かれた丸い缶を開けた時にワクワク感を味わえるようにしたそうです。店主の石原佐知さんは「缶に負けないように工夫して中身を作っています。缶を開けた時にすてきだと思ってほしい。見た目だけでなく味にもこだわり、コストは落とさず、おいしくて体にいいものを食べてもらえるようにしています」と話します。
もう一品は「お寺の万能味噌」。滋賀県産のみそを石原さんが味付けしました。「ご飯に合うので、おにぎりの具や、みそ焼きおにぎり、みそカツのタレにも使えます。ミンチと一緒にレタスで巻いて食べるのもおいしい。おせちのたたきゴボウの味付けにも最適」と話す石原さん。
みそのパッケージには大津に伝わる民俗絵画「大津絵」。大津の土産としてJR大津駅前の大津駅前観光案内所でも販売されています。
寺の中にあるカフェ
「佐知’s Pocket」があるのは等正寺の一角。石原さんは住職の配偶者である坊守としての顔も持ちます。
石原さんは大和料理学園(現ラ・キャリエール)で講師として勤務した後、等正寺の住職と結婚。自宅で開いていた料理教室の生徒から「ケーキの販売をしてほしい」との声があり、ケーキや総菜の販売を始めることに。1996(平成8)年に菓子製造業を取得し、寺の玄関にショーケースを置き、「おいしい物が飛び出してくる夢みたいなポケット」という思いを込めて「佐知’s Pocket」と名付けて販売をスタート。
クリスマスケーキや誕生日ケーキ、オードブル、ローストチキンなども販売。石原さんは「クリスマスに寺からケーキとチキンが出ていくという不思議なことになりました」と笑顔を見せます。
料理学校では和食を専門としていた石原さんは、2018(平成30)年から、寺野書院で和食のコース料理を提供する「知正庵」を始めました。予約制で法事の食事や和食ランチを提供しています。
2020年には、本堂の中にカウンター席を設け、寺の庭の池で泳ぐコイを見ながらスイーツを味わえる「こいcafe」も始めました。
石原さんは「寺とケーキという組み合わせに驚く人もいますが、寺離れが進む中、私にできることをしようと思っています。高齢の人には法事の後、食事のために移動することも大変ですが、ここなら移動しなくても食事ができます。一人でお参りしていた人が『総菜やケーキがあるなら子どもや孫を連れて来よう』と言ってくれたこともあり、幼い頃に『コイに餌をあげた』『ケーキを食べた』という思い出があれば、大人になって寺に行こうと思ってもらえるかもしれないので、続けていきたいです」と話します。
佐知’s Pocket
滋賀県大津市小関町7-24等正寺内
077-522-0639
◆ケーキ、総菜販売時間:10時~17時30分 無休
◆カフェ営業時間:13時~17時(こいCafe) 水曜定休
※知正庵のコース料理は3日前までに予約が必要
ホームページ https://www.sachis-pocket.co.jp/
ECサイト https://sachis-pocket.com/
取材・文=山中輝子