大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
2015(平成27)年に大津商工会議所が始め、現在までに55点が認定を受けています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
やわらか鯉の俵巻煮
第23回は松水(しょうすい)商店(大津市杉浦町)の「やわらか鯉(こい)の俵巻煮(たわらまきに)」。
滋賀県産のコイをゴボウに巻き、たれでじっくり煮込んでいます。
三枚におろしたコイの身を酸性水に入れて洗い、淡水魚特有の臭みを抑えています。コイの身を丁寧に骨切りしてから、ゴボウを芯にして巻き付け、かんぴょうで留めて俵型に成形。水分を取るために1日置いてから、継ぎ足して使っているたれとさんしょうで柔らかくなるまで煮込みます。
「魚のおろし方は結婚してから教えてもらった」と話す妻の松井隆子さん。1974(昭和49)年に松水商店を夫の他吉さんと始めて約50年がたった今では、毎日手際よく魚をさばいています。
隆子さんは「鯉の俵巻煮は、数年間、試行錯誤を繰り返して今の形になりました」と振り返ります。他吉さんは「巻くのは妻のほうが上手で、私は触らせてもらえません。この料理は、ほかの店にはない」と胸を張ります。
「やわらか鯉の俵巻煮」は2017(平成29)年に大津百町百福物語に認定され、2023年の「第38回滋賀県水産加工品品評会」では水産庁長官賞を受賞しました。
「やわらか鯉の俵巻煮」は松水商店の店舗で購入できます。
50年続く川魚料理専門店
松水商店では、創業当時から琵琶湖の魚を使った料理を販売しています。「やわらか鯉の俵巻煮」のほか、ふなずし、ゴボウにウナギを巻いた「鰻(うなぎ)の八幡巻煮」、アユの塩焼き、滋賀県の郷土料理であるスジエビと大豆を煮た「えび豆」、シジミや氷魚(アユの稚魚)、ウロリ(ヨシノボリの稚魚)など滋賀県で昔から食されてきた湖魚のつくだ煮も販売しています。
「湖産子持ちモロコサンショ煮」は、2014(平成26)年に滋賀県水産加工品品評会で最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞しています。
他吉さん85歳、隆子さん79歳となった今も、2人で川魚料理を作り続けています、隆子さんは「できる限り仕事をしたい」と話します。
松水商店
滋賀県大津市杉浦町9-9
077-534-0180
営業時間 8時30分~19時
取材・文=山中輝子