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滋賀県出身パラリンピック競泳金メダリスト木村敬一選手自伝「闇を泳ぐ」

自伝「闇を泳ぐ」を手に持つ木村敬一選手(写真提供:東京ガス)

自伝「闇を泳ぐ」を手に持つ木村敬一選手(写真提供:東京ガス)

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 滋賀県栗東市出身で、東京2020パラリンピック競技大会で金メダルを獲得した木村敬一選手の初の自伝書籍「闇を泳ぐ~全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。」が販売されている。

「闇を泳ぐ~全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。」表紙

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 木村選手は2歳の時に病気が原因で視力を失い、小学4年生から水泳を始めた。小学入学と同時に寮生活を始め、中学入学時に単身上京し、筑波大付属盲学校(現・筑波大学付属資格特別支援学校)に入学。水泳部に入部し、中学3年生でジュニアの国際大会に出場し、メダルを獲得する。パラリンピック北京2008大会、ロンドン2012大会、リオ2016大会、東京2020大会の4連続出場し、東京大会で悲願の金メダルを獲得した。

 自伝では、水泳との出合いから寮生活での楽しみ、水泳部のコーチ寺西真人さんとの出会い、リオ大会で「金メダルをとれなかった」苦悩、アメリカでの武者修行、新型コロナウイルスの影響で帰国したことなどが書かれている。

 帰国して栗東の実家で自粛生活を送る中で、アメリカで体験したことをブログサービス「note」につづったことがきっかけで、「もっと小さい頃からの自分を振り返って文章にしてみたい」と自伝の執筆を決めた。中学・高校時代の寮生活での「冒険」などが鮮明に描かれている。木村選手は「視覚情報がないので、全てのことを会話で覚えている」と話す。

 木村選手はリオ大会で4つのメダルを獲得するも、金メダルを獲得できなかったことから、アメリカでの武者修行を決める。木村選手は「リオからの5年間は長かった。東京では世界一を目指していた。どうしても金メダルを取らないといけない、どんな形でも勝てばいいと思っていた。勝利に支配されていた」と振り返る。

 自伝は東京大会の前に終わっているが、「本当の最終章」ともいえる東京大会では男子競泳100メートルバタフライで金メダルを獲得し、レース後に「この日のために頑張っていた『この日』って本当に来るんだな」と泣きながら話した。木村選手は「何度振り返っても、ただただよかった。うれしくて感情が爆発した」と話す。中学の時から指導を受け、パラリンピックでも選手に壁の位置を教える「タッパー」を務めた寺西さんについては「寺西先生に長い時間かけて、やっと恩返しができた。先生の教え子である先輩たちの仲間に入れたのかなと思った」と感謝を述べた。

 自伝には、「母より」と題して木村選手の母親の思いも掲載。6歳から実家を離れ、寄宿舎生活を送ってきたことについて「学校まで車で敬一を送り届けた帰り道は、悲しくて、悲しくて」と書かれている。木村選手は「自分の両親はすごいと思っている。守りながら育てる方が楽だったと思うが、大人になったときに自立できる能力の貯蓄があるかが重要で、視覚障がいがあり、経験できることが少ない私に積極的に働き掛けて成長を促してくれた。自分が親になったとき、そこまでできるか分からない」と感謝する。

 「同じように障がいのある子の親に読んでもらって、何かヒントになれば。子どもは、愛情を持って育ててあげれば、周りにすてきな登場人物が現れてくれて楽しい人生を歩んでいける。心温まるエピソードは誰にでもあると思う」と話す。

 四六判、272ページ。価格は1,650円。

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