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守山の美術館でバンクシーとストリートアーティスト展 「今だからこそ心に刺さる作品」

バンクシーの「風船と少女」

バンクシーの「風船と少女」

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 ストリートアートに焦点を当てた「バンクシー&ストリートアーティスト展~時代に抗(あらが)う表現者の声よ響け」が3月12日、佐川美術館(守山市水保町)で始まった。

「ナパーム弾の少女」の写真をモチーフに、少女の手をミッキーマウスとドナルド・マクドナルドが握っている「ナパーム」

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 展示では、イギリスを拠点とする正体不明のストリートアーティスト、バンクシーの作品65点のほか、同じくストリートアーティストの作品35点を「バンクシー以前:グラフィティ」「バンクシーとストリートアートの進化」「インスピレーションの始まりと根源」「バンクシー:作者、アーティストを超えて」「バンクシー:制度に対する芸術」に分けて紹介する。

 「バンクシー以前」では、1970年代のニューヨークを中心に活躍したグラフィティアーティストの作品を展示。「ストリートアーティストの父」と称されるタキ183の作品などを紹介している。

 「バンクシーとストリートアートの進化」では、アメリカだけでなく、ヨーロッパや日本でも次第に注目を集めるようになり、「ストリートアートの成熟期」ともいえる1990年代から活躍するTVBOYやアンドレア・ラヴォ・マットーニなどの作品を展示している。佐川美術館学芸員の藤井康憲さんは「ストリートアーティストも正当に評価されるはずだという思いを込めてゴッホやフェルメールを模倣した作品もある。ストリートアーティストはプライドをもって作品を描いている。作品には解説を付けていないが、それぞれの作家の意図を感じてもらいたい」と話す。

 「インスピレーションの始まりと根源」では、アンディ・ウォーホルの「キャンベルのスープ缶」を模倣してバンクシーが描き、無許可でニューヨーク近代美術館(MOMA)に展示した「スープ缶」などを展示している。藤井さんは「ウォーホルの作品はアメリカの資本主義を賛美したが、バンクシーは地元経済を脅かすイギリスの大手スーパーマーケットへの批判を込めて描いている。ビクターの犬が大砲を持っている作品など資本主義に対する批判精神が表れている作品は多い」と話す。

 ネズミを「夜な夜な町に現れては消えていくストリートアーティスト」の象徴として描くバンクシーの「ギャングスタ・ラット」などと共にネズミをモチーフにしたチャイナガール・タイルの粘土彫刻作品「私はバンクシーを盗んだ」も展示している。一方で、バンクシーが影響を受けたキース・へリングの作品をモチーフとしたバンクシー作品も紹介。バンクシーが自らの表現様式を確立させた原点に迫る展示が見られるという。

 「バンクシー:作者、アーティストを超えて」では、バンクシーがデザインを手がけたヒップホップのCDジャケットや、2015年にイギリスで5日間だけ開催されたテーマパーク「ディズマ(=不愉快な)ランド」で配られた「I am an imbecile」と書かれた風船などを展示し、グラフィティ作家とは異なるバンクシーの一面にスポットを当てる。藤井さんは「バンクシーはデザイナーではないか、実はミュージシャンではないかなどとうわさされているが、展示では、総合プロデューサーとしてのバンクシーを見てもらいたい」と話す。

 「バンクシー:制度に対する芸術」では、バンクシーの神髄ともいえる社会や政治に対する風刺、批判を表した作品を展示。オークション落札後にシュレッダーにかけられたことで一層有名になった「風船と少女」や、ニック・ウットがベトナム戦争で撮影した「ナパーム弾の少女」の写真をモチーフに、少女の手をミッキーマウスとドナルド・マクドナルドが握っている「ナパーム」など、反戦への思いと資本主義への批判を込めて描いた作品を紹介する。藤井さんは「戦争や新型コロナなど、今の社会情勢がこうだからこそ、バンクシーやストリートアーティストの思いが作品を見る人に突き刺さるのではないか。今だからこそ見てもらえれば」と呼びかける。

 京都から来た男性は「難しいところもあったが、社会問題に対する批判や風刺が見られる作品で、考えるきっかけになった」と話した。

 開催時間は9時30分~17時。月曜休館(祝日の場合は開館、翌日休館)、4月5日~8日休館。入館料は、大人=1,300円、大学生・高校生900円、中学生以下無料。事前にホームページからの予約が必要。6月12日まで。

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