写真展「今森光彦 里山 水の匂いのするところ」が7月8日、滋賀県立美術館(大津市瀬田南大萱町)で始まった。
今森さんが撮影した仰木の棚田。現在では圃場整備が進み、一部が整備されているため、同じ風景は見ることができない
琵琶湖を望む里山にアトリエを持つ写真家・切り絵作家の今森さんは、1992(平成4)年から里山をテーマに写真を撮影している。同展では「水の循環」をテーマに、奥山の水源から雑木林、田園、琵琶湖周辺の暮らし、ヨシ原、琵琶湖と水の流れに沿って92点の写真作品を展示。「湖西にひろがる、広大なる棚田」以外の91点は今回の企画展のために新たにプリントしたという。
展示は、県内の奥山で撮影された「トチの実を拾う人」や産卵のために渓流を遡上(そじょう)するビワマス、など水源の風景から始まり、水が流れ着く琵琶湖の四季折々の風景で終わる。
今森さんが1997(平成9)年に買い取って保存活動をしている雑木林で撮影された何度切っても芽吹く木や雑木林で生きる昆虫や植物など生命の持つ力強さが伝わる写真や、今森さんがアトリエを構える大津市仰木にある棚田の写真も展示する。同館学芸員の芦高郁子(高ははしごだか)さんは「今森さんは、手つかずの自然ではなく、自然と生き物と人が共に生き豊かな多様性を保つ自然を『自然(じねん)』と考え、里山や棚田を撮影している。圃場(ほじょう)整備が進み、現在は一部が整備され風景が変わってしまった仰木の棚田の写真を見てもらいたい」と話す。
第4章の「湖辺(みずべ)の暮らし」では、高島市針江地区の漁師や、比良山系に降った雪、雨が伏流水となり、各地で湧き出ていて、湧き水を生活用水に使うこの地域の伝統「川端(かばた)」の写真を展示。芦高さんは「今森さんの写真から、針江の透き通った湧水や、水を使い生活する人、残飯を食べる鯉など、自然と動物、人が一緒に生きていることが分かる」と話す。
最終章は水が流れ着く琵琶湖の風景。芦高さんは「写真集で見るよりも細部まで見ることができて迫力がある。時間帯や季節によって変わる色彩豊かな琵琶湖の風景を見てもらえたら」と呼びかける。
「ラボ」では切り絵作家としても活動する今森さんの切り絵作品を展示する。8月15日は今森さんによる切り絵のワークショップを行う。7月16日・9月17日は今森さんが会場を案内するギャラリーツアーを行う。
開館時間は9時30分~17時(最終入場16時30分)。月曜休館(祝日の場合は開館、翌火曜休館)。観覧料は、大人=1,200円、高校生・大学生=800円、小学生・中学生=600円。9月18日まで。