「卓越した技術者(通称=現代の名工)」の授賞式が11月13日、東京都内のホテルで行われ、滋賀県からは時計修理士の染矢泰輔さんと瓦ふき工の長谷川成幸さんが選ばれた。
「現代の名工」は、厚生労働省が建築、金属加工、造園などの各分野で卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を表彰するもので、今年は全国から22部門、150人が選出された。
染矢さんは「時計の祖神」といわれる天智天皇を祭る近江神宮(大津市神宮町)の付属専門学校である近江時計眼鏡宝飾専門学校で時計技術を指導する傍ら、全国から寄せられる修理困難な時計を修理している。今年の受賞者の中で最年少となる38歳で受賞した。
長谷川さんは大学の建築科を卒業後、ゼネコンで現場監督を経験した後、結婚を機に瓦工事に従事。文化財や社寺の瓦工事を請け負う山本瓦工業(奈良県)で8年間修業をした。長谷川さんは「何も知らずに飛び込んだが、瓦をふくのが面白くなってやめられなくなった。山本瓦工業では、当時は珍しかった原寸施工図を作製し、高度な施工が行われていた。ゼネコンで施工図面を描いていた経験が役立った」と振り返る。
1993(平成5)年に長谷川(野洲市西河原)に戻り会社を継いだ。当時、奈良では土を使わない桟ぶき工法が普及していたが、滋賀県では土ぶき工法が主流となっていた。長谷川さんが桟ぶき工法を取り入れた当初は反対する意見もあったが、1995(平成7)年に阪神大震災が起こったことにより、軽く、耐震性の高い桟ぶき工法が受け入れられるようになった。
滋賀県瓦高等職業訓練校(守山市木浜町)の講師、校長を務める傍ら、竹生島にある国宝・宝厳寺(長浜市)唐門や京都御所の撞木(しゅもく)廊下などの文化財や社寺、一般住宅の瓦ふき工事に従事している。
長谷川さんは「現代の名工を受賞したことにより、今までにした仕事にも、これからする仕事に対しても、世間の見る目が変わる。依頼主の期待値が上がると思うので、仕事に対する重圧感があるが、これからも真摯(しんし)に取り組みたい」と話す。