大津と京都を結ぶ琵琶湖疏水を運航する観光船「びわ湖疏水船」が3月28日から期間限定で、航路を三井寺(大津市三井寺町)から大津港(浜大津5)まで延伸した。
明治時代に作られた三井寺・山科間にある約2.4キロのトンネル
琵琶湖疏水は1890(明治23)年に作られた運河。明治維新後衰退した京都を琵琶湖の水利によって復興させるために建設され、水力発電、舟運などに利用された。陸運の発達により、船の運航は1951(昭和26)年に途絶えたが、2018(平成30)年、同観光船が67年ぶりになる本格的な運航を再開した。春季(3月~6月)と秋季(10月~11月)に運航している。
琵琶湖と琵琶湖疏水は水位が50センチから1メートルほど違うため、同観光船は琵琶湖に入らず三井寺から蹴上までを往復運航してきた。2つの門で水位差を調整する大津閘(こう)門(大津市三井寺町)が電動化されたことにより、湖内の大津港まで延伸。蹴上までの約9.3キロ区間の往復運航することになった。春の運航で大津港まで乗り入れるのは3月31日までと4月4日~7日の8日間のみで、乗船券が2月の発売後すぐに売り切れる人気ぶりを見せた。
主に水の流れを利用して運航し、約85分で大津港から蹴上までゆっくり進む下り便は、湖内で「琵琶湖周航の歌」が生まれた旧制第三高等学校(現在の京都大学)ボート部のボート場のほか大津絵橋などを通り、大津閘門の2つの門の間でいったん停止する。停止後は水位が琵琶湖疏水と同じ高さに下がるのを待って再出発する。明治時代に作られた三井寺・山科間にある約2.4キロのトンネルには、建設時に使った竪坑(たてこう)のほか伊藤博文や京都府3代目知事・北垣国道らの言葉を彫って坑口に掲げたへん額などがある。上り便は運河の流れに逆らってエンジンで進むため、閘門で水位が上がるのを待つ時間を含めても蹴上から大津港まで約65分で到着する。
春は桜や菜の花が咲き、秋は紅葉したモミジやイチョウが航路沿いを彩る。沿道の桜は3月27日に咲き始め、4月上旬には見頃を迎える見込み。
大津市観光振興課長の伏見亮平さんは「琵琶湖観光の玄関口である大津港まで船で来て、大津港を拠点として市内を観光してもらえれば」と期待を寄せる。
三井寺発着の便は6月9日まで運行する。