琵琶湖の水草についての企画展示「湖底探検II-水中の草原を追う-」が現在、琵琶湖博物館(草津市下物町)で開催されている。
近年、琵琶湖の南湖では水草が繁殖し、船のスクリューに絡まり運航できず、漁業に影響を与えていることや、腐敗した水草の悪臭などが問題となっているが、水草が本当に琵琶湖に不必要なのか、水草について多面的にとらえた展示となっている。
展示では、琵琶湖の湖底を撮影した映像や、水草の種類などとともに、南湖で水草が大量発生した原因や、滋賀県が取り組んでいる水草の刈り取り作業と刈り取った水草の活用法、琵琶湖周辺に暮らす人々が水草とどのように関わってきたかを紹介している。
万葉集にも「玉藻刈る」と詠まれており、奈良時代には琵琶湖で「藻取り(水草刈り)」が行われていたと推測され、江戸時代には琵琶湖の藻取りの境界線を巡って裁判が行われていたとの記載も残る。刈り取った水草は田畑の肥料として使われていた。同館学芸員の芳賀裕樹さんは「今は迷惑者扱いされている水草だが、昔は奪い合っていた」と話す。
1960年代から1990年代前半の南湖は水中の窒素やリンなどの栄養塩類が多い状態になる富栄養化が進み、1977(昭和52)年には赤潮が大量発生し、悪臭や琵琶湖の魚の減少など多くの問題が起こった。富栄養化で琵琶湖が濁ると、水中に光が入らないことから水草は育たなかった。1990年代半ばから琵琶湖の水質が改善され、透明度が上がったことから水草が増えたという。芳賀さんは「南湖の水草は壊滅寸前だったが、水がきれいになったことで水草が増えた。水草は水質改善の目安となっている」と話す。
芳賀さんは「水草が増えると波が静かになり、さらに琵琶湖の透明度が上がる。水草を産卵場所としている魚は多く、稚魚の成育場所にもなっていることから、水草が増えると魚やタニシなどの生き物も増える。一方でシジミは減り、湖底の生き物に酸素が届かないなどの弊害もある。水草は良い物か悪い物かということではない。悩んでほしいというのがこの展示の一番のメッセージ」と話す。
11月24日まで。
同博物館の開館時間は9時30分~17時(最終入館は16時)。入館料は、大人=800円、大学生・高校生=450円、中学生以下無料。企画展示観覧料が別途必要。「湖底探検II」企画展示観覧料は、大人=300円、大学生・高校生=240円、中学・小学生=150円。