彦根藩初代藩主、井伊直政の名を冠した日本酒ブランド『直政NAOMASA』誕生。家紋「武田菱」に導かれた蔵元の挑戦

直政 西の丸 720ml
滋賀県愛知郡愛荘町にある愛知(えち)酒造は、明治2年(1869年)の創業以来、156年にわたって清酒を造り続けてきた蔵元です。特長は、鈴鹿山系の伏流水と豊かな風土に恵まれた環境の中で受け継がれる、南部杜氏の指導に基づく伝統的な酒造り。代表銘柄『富鶴(とみつる)』は、国内はもちろん、海外でも高く評価されています。
近年では、2021年に「Kura Master」プラチナ賞、「フェミナリーズ世界ワインコンクール」金賞を受賞、2025年4月には「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」でCOMMENDEDを受賞しました。また、スペインのサンセバスチャンにある世界的な食の教育拠点「バスク・カリナリー・センター(BCC)」で開催された日本酒講座(CINVE 2025)に商品を提供し、「欧州市場での認知と定着が期待される」と評価を得ています。
こうした海外での評価が高まる中、世界で通用する自社ブランドの創出をめざし、動き出した愛知酒造の5代目蔵元、中村哲男さん。先祖の歴史を紐解く中でたどりついた徳川四天王として名を馳せた、彦根藩初代藩主の井伊直政公について調べる中で、その人間性や生きざまに感銘を受け、その精神を宿す地酒ブランド『直政』を完成させました。第一章『直政 西の丸』は2025年5月27日に販売開始。南部杜氏の伝統が結晶となった高級日本酒として国内外に向けて展開中です。その開発ストーリーをうかがいました。

蔵の入口には家紋の暖簾暖簾は地元名産の近江上布を手織りされたもので作成
●先祖は井伊直政公に仕えていたのではないか。運命と使命を感じ、新ブランドに挑戦
・・・『直政』ブランド、誕生のきっかけを教えてください。
きっかけは、中村家の家紋「武田菱」です。歴史に詳しい親族との会話の中で、家紋の話になり、これは彦根の赤備えの一派に属していた武田の赤備えであると聞いたことがすべての始まりです。歴史を調べてみると、織田・徳川軍の甲州征伐で武田家が滅び、赤備えを率いた山県昌景の遺臣を、徳川家康の命により預かったのが井伊直政公で、徳川家臣団の中でも有数の軍事力を備えることになったと伝えられています。「もしかしたら先祖は井伊直政公に仕えていたのではないか」と、調べていくほどに、その可能性が濃厚になり、「これは運命だ」と思いました。当家の酒造りのルーツ辿ることで、新たな使命が課された瞬間でした。
・・・なぜ新ブランドをつくろうと思ったのですか?
近年、海外で日本酒人気の高まりから、展示会や品評会の出展機会が増えています。その舞台に立つことを考えた時、『富鶴』とは異なるブランド展開が必要だと思いました。滋賀の地酒の代表として、地域や歴史を背景にストーリー性のある酒造りをしたい、そんな思いにふさわしいテーマに出会えたことに、強いご縁を感じています。
戦国武将の配下に先祖がいたことに思いをはせて、先祖が仕えた名将に肖り酒造りに取り組みました。
●卓越した交渉能力で関ヶ原の戦いを勝利に導いた井伊直政公。その伝統と人物像を日本酒で表現
・・・直政公のどんなところに魅力を感じたのですか?
新しい酒造りを始めると決めてから、私たちは直政公ゆかりの地を訪ね歩き、文献を読み解き、現在も調査を続けています。その中で浮かび上がってきたのは、直政公の武将としての魅力、人間としての魅力です。
直政公は、“赤備え”を率いて戦乱の時代を駆け抜けた智勇兼備の武将。合戦での活躍だけではなく、和平交渉術や謙虚な人柄など、“勝つために戦う”のではなく“平和を導く”という人間性に感銘を受けました。地元をはじめ静岡県の龍潭寺など、直政公ゆかりの寺社を訪れた際には、住職や宮司の方々から「がんばってくださいね」と声をかけていただきました。400年以上守られてきた記憶と、自分たちの挑戦がつながった瞬間に胸が熱くなりました。
・・・直政ブランド第一章『直政 西の丸』の特長を教えてください。
味わいは、直政公に似ています。すっきりとした爽快さの中に、芯のある旨み。キレがありながら奥深く、余韻を楽しめるお酒です。刀を持って敵陣に向かっているけれど、穏やかな人柄を表すように、華やかな香りを醸し、出来上がった時は感動しました。
酒米には、地元・愛荘町産の吟吹雪を使用。その年の米の状態を見極めながら、仕込みのタイミングから工程の一つひとつまで、手をかけて丁寧に仕込みました。
とりわけ仕込みの年は厳しい暑さが続き、酒造りには非常に難しい環境でした。
品質を最優先に考えた結果、あえて量を追わず、少量仕込みを選択。精米歩合55%まで磨き上げた、凛とした辛口の純米吟醸に仕上げています。
冷蔵管理のもと、最良の状態でお届けするため、製造本数は限定668本。一本一本にシリアルナンバーを付し、蔵元の責任としてお届けします。
●『直政 西の丸』が「ルクセンブルク酒チャレンジ2025」銀賞受賞
・・・今回の受賞は、どのような点が評価されたのですか?
これは、日本酒を世界に広めることを目的とした国際的な酒の品評会で、今春、ルクセンブルクで開催されました。出品後、7月初旬に受賞の知らせが届き、総評もいただきました。海外では食文化が異なり、日本人とは飲み方が違います。香りや味はもちろんですが、食材との相性も審査されます。総評には、「最初の香りはパパイヤの青い香り、グラスを回すと、よりフレッシュなミネラル感や青りんごの皮のような爽やかさ、口に含むと、控えめな甘さとほどよい酸味、軽やかな旨みが感じられ、最後はキリッとしたドライな後口。おすすめのペアリング料理は、白身魚や牡蠣などの魚介類やフレッシュな味わいのチーズとの相性が抜群」とありました。
国が違えば楽しみ方もさまざまで、可能性の広がりを感じています。

酒チャレンジ ルクセンブルクで銀賞受賞
・・・直政ブランド第二章『直政 鐘の丸』(本醸造)も発売されましたね
この商品は、地元の方々や彦根を訪れる観光客、戦国武将ファンの皆さんに、気軽に飲んでいただけるものとして開発しました。「彦根に来られたら、殿様になった気分で、彦根のお料理と『直政』で楽しいひとときを過ごしていただきたい」、そんな思いを込めています。
・・・歴史ある蔵元として日々大切にされていることは何ですか?
伝統的な酒造りは守りつつ、時代に合った酒造りをしていくことが大切です。昔と同じ酒造りをしていては生き残れません。嗜好の変化や海外の食文化に合わせたものなど、日々学びです。酒造りは、同じ材料で同じように使ったとしても、同じものは作れません。基本は同じですが、自然の力に任せるところも大きく、それぞれ表情が異なるお酒が出来上がります。その奥深さを活かしながら、さらなる精進して参ります。
●愛知酒造から世界へ。『直政』を通じて、直政公と日本酒の魅力を発信したい
・・・今後の目標をお聞かせください。
新ブランド『直政』は、今まさに立ち上がったばかり。残念ながら地元・彦根市内でも井伊直政公の知名度はまだまだですが、だからこそ今しっかり伝えたいという想いがあります。この商品をきっかけに、「井伊直政」公という人物の魅力が多くの人に伝わればと、微力ながら思っています。
『直政』の一杯の中に宿るひとときは、交渉術で戦を回避し、圧倒的な武力で戦局を変え、主君への忠義を貫いた井伊直政公の人間力です。「戦の先にある平和を願う姿勢」と「静かな強さ」。その精神を「時空を超える一杯」として、日本中、そして世界中の人々に届けていきたい。この酒を通じて、直政公が歩んだ慶長の時代への旅が始まる。飲む人それぞれの心に、強さと優しさ、そして未来を切り拓く勇気が湧いてくるような、そんなブランドを目指しています。

蔵前で 中村夫妻
■企業名
愛知酒造 有限会社
代表取締役 中村 哲男
所在地:滋賀県愛知郡愛荘町野々目207
TEL :0749-42-2134
FAX :0749-42-6361
・URL:https://www.tomitsuru.co.jp/
・オンラインショップ:https://tomitsuru.myshopify.com/
■『直政 西の丸』720ml ※価格は弊社ECサイトをご確認ください
完全予約制販売 限定本数 完全シリアル番号制
『直政 西の丸』紹介・購入ページ https://www.tomitsuru.co.jp/naomasa-001/
■『直政 鐘の丸』720ml、300ml ※価格は販売店様にご確認ください
『直政 鐘の丸』紹介入ページ https://www.tomitsuru.co.jp/news/naomsa-kanenomaru.html