プレスリリース

IntraPhoton CTO 藤原康文教授、青色LEDノーベル賞研究者 赤崎勇博士の名を冠した「赤崎勇賞」を受賞

リリース発行企業:株式会社IntraPhoton

情報提供:

次世代マイクロLEDの研究開発を行う 株式会社IntraPhoton(本社:滋賀県草津市) は、同社共同創業者でありCTOを務める 立命館大学教授 藤原康文 が、2026年3月15日、東京科学大学大岡山キャンパスにて開催された 第73回応用物理学会春季学術講演会 において、第16回 応用物理学会 化合物半導体エレクトロニクス業績賞(赤崎勇賞) の受賞講演を行ったことをお知らせします。

藤原教授は、「半導体イントラセンターフォトニクスの学理創成と社会実装」に関する研究成果が、次世代赤色マイクロLED技術を基盤とした革新的モノリシック*フルカラーマイクロLEDディスプレイの実現を推進する成果として評価され、本賞を受賞しました。

この研究成果は、AR/VRなど次世代ディスプレイ分野で求められる 超高精細マイクロLEDディスプレイの実現に向けた重要な技術基盤となるものです。

「赤崎勇賞」は、青色LEDの研究により2014年ノーベル物理学賞を受賞した 赤崎勇博士(名城大学終身教授・名古屋大学特別教授) が、2009年京都賞受賞時の賞金の一部を基金として設立した賞で、化合物半導体エレクトロニクス分野で顕著な研究成果を挙げた研究者を顕彰するものです。

※モノリシック:RGBのLEDを同一半導体基板上に一体形成する技術。従来のチップ接合方式に比べ、高精細ディスプレイの実現に有利とされる次世代アーキテクチャ。


受賞講演を行う藤原康文教授(東京科学大学 大岡山キャンパス)

受賞概要

受賞者
藤原 康文(立命館大学 総合科学技術研究機構 教授)
受賞業績
半導体イントラセンターフォトニクスの学理創成と社会実装

藤原教授は1980年代初頭より、化合物半導体中の金属元素の光物性研究に取り組み、電子状態、結晶場、光学遷移過程などの基礎物理を解明してきました。その研究成果を基盤として、希土類元素発光を利用したLEDや、モノリシックフルカラーマイクロLEDディスプレイの基盤技術に関する研究を推進し、基礎物理からデバイス応用まで幅広い成果を挙げています。

これらの研究を通じて藤原教授は、半導体中の金属元素発光を扱う新しい研究分野「半導体イントラセンターフォトニクス(Semiconductor Intracenter Photonics)」を提唱し、世界的に定着させました。また、これらの研究成果は、狭帯域発光LED、波長ゆらぎのない高安定光源、マイクロLEDディスプレイなどの新しい光デバイス応用へと展開しています。

研究成果の概要

藤原教授の研究は、半導体中に添加された金属元素の光物性の解明から始まりました。初期には Crドープ半絶縁性GaAs基板の発光解析を出発点として、希土類元素を添加したGaAsにおける電子状態や発光機構の研究へと発展しました。

特に Er(エルビウム)と酸素を共添加したGaAs において局所原子構造を制御することで、1.5?m帯発光強度を約100倍向上させることに成功しました。さらにその材料を用いた GaAs/GaInP LED を作製し、電流注入によるEr発光(1.54?m)を世界で初めて実証しました。

その後研究は Eu添加GaN材料へと展開し、ワイドバンドギャップ半導体におけるエネルギー輸送機構を解明しました。この研究により
- Eu発光中心の局所構造がエネルギー輸送効率を支配
- ドナー・アクセプタ欠陥の共存による高効率発光
- 共添加元素による発光制御
- 超格子構造による量子閉じ込め効果
- フォトニック結晶共振器による発光増強

などの重要な物理メカニズムが明らかになりました。

これらの成果を基盤として、Eu添加GaNを用いた狭帯域赤色LEDが開発されました。この赤色LEDは発光半値幅 1nm以下、極めて高い波長均一性/再現性、高い温度安定性(0.001nm/K)といった特性を有し、高精細マイクロLEDディスプレイを支える次世代赤色光源として期待されています。

藤原CTOが推進するIntraPhotonの第3世代マイクロLEDアーキテクチャ

今回の受賞対象となった研究は、希土類Euを用いた赤色発光材料の基礎物理の解明から、次世代赤色マイクロLEDの実現、さらにモノリシックフルカラーマイクロLEDディスプレイへの応用に至る一連の成果です。マイクロLEDディスプレイでは、フルカラー化のためにRGBをどのように構造化するかが重要な技術課題となっており、そのアーキテクチャは大きく3つの世代に分類されます。

第1世代:RGB物理積層方式

マイクロLEDのフルカラー化に向けた積層ピクセルアーキテクチャの初期世代として、RGBそれぞれのLEDを製造・選別し、物理的に積層・接合してフルカラー表示を実現する方式です。

この方式では、RGBチップを個別に製造して接合する チップ積層方式 に加え、RGBのLED層を ウェハ接合(wafer bonding) により積層する方式などが提案されています。いずれもRGBを物理的に積層してピクセルを構成するため、モノリシック構造ではない積層型アーキテクチャに分類されます。
しかしこの方式では
- RGBチップやウェハの接合工程が必要となるため製造プロセスが複雑化し、コストが高くなる
- 接合位置精度や歩留まりの確保が難しく、超高精細ディスプレイでは実装難易度が高い
- 一般的に赤色に用いられるAlInGaP系LEDは、微細化すると発光効率が大きく低下する

といった課題があり、AR/VR用途などの超高精細マイクロLEDディスプレイの実用化に向けては技術的、商用的観点から制約が指摘されています。

第2世代:InGaNモノリシック積層

第1世代の課題を解決するために考案されたのが、同一基板上でRGBを形成するモノリシック構造です。しかし、第2世代型モノリシック構造で使用されるInGaNの赤色発光は、青色や緑色と比較して非常に高いIn組成が必要となるため、
- 格子不整合による結晶欠陥の増加
- 低温成長による結晶品質の低下
- 相分離や 10~20nm程度の波長ばらつき
- 注入電流量による波長シフト

などの問題が生じやすくなります。さらにマイクロLEDでは微細化に伴い、側壁欠陥、非放射再結合の影響が大きくなるため、赤色InGaNマイクロLEDの実用化は特に難しいとされています。

またInGaNでは 赤色ほど低温での結晶成長が必要となるため、モノリシック積層では一般的に、青(高温) → 緑 → 赤(低温)、の順に積層する必要があります。その結果、RGBピクセルの最上層に配置される赤色LEDの面積を十分に確保することが難しく、輝度設計の観点でも制約が生じます。

さらに量産プロセスの確立に不可欠な、ウェハの大口径化においては、面内での波長均一性を高い精度で維持する必要があります。しかしInGaN赤色発光は In組成によって発光波長が決まる材料系であるため、組成のわずかな揺らぎが波長ばらつきに直結するという発光原理上の制約があり、大口径ウェハで高い均一性を確保することは本質的に難しいと指摘されています。

第3世代: GaN:Euモノリシック積層(IntraPhoton)

藤原教授が研究を推進してきた Eu添加GaN赤色発光技術を基盤として、IntraPhotonは第2世代の課題を解決する 第3世代のモノリシック積層アーキテクチャを提案しています。

GaN:Euは GaN母体の結晶構造を維持したまま発光する材料系であり、InGaNのように高いIn組成を必要としません。そのため GaN本来の高温結晶成長条件を維持した高品質な結晶成長が可能です。これは、InGaNが In組成によって発光波長を制御する材料系であるのに対し、GaN:Euでは 希土類Euの4f殻内遷移によって発光する材料系であるためです。
その結果
- 高品質GaN結晶
- 高いウェハ均一性
- 微細加工耐性

を実現できます。

またEu発光は 波長ばらつきが極めて小さく、結晶成長の安定性も高いため、ウェハの大口径化にも適した材料系と考えられています。これにより、量産プロセスの確立に向けた実装可能性が高い次世代マイクロLEDアーキテクチャとして期待されています。

さらにGaN:Euでは 高温結晶成長が可能であるため、赤(より高温) → 青(高温) → 緑、の順で積層することができます。これにより、RGBピクセルの中で 最も面積を必要とする赤色LEDを最下層に配置することが可能となり、輝度設計の自由度が大きく向上します。

この第3世代アーキテクチャにより、IntraPhotonは 高精細・高輝度を両立する革新的モノリシックフルカラーマイクロLEDディスプレイの実現を推進しています。青色LEDの発明が半導体照明の歴史を大きく変えたように、次世代赤色マイクロLEDはAR/VR時代のディスプレイ技術に新たな可能性をもたらすことが期待されています。

マイクロLEDフルカラー化技術の進化(第1世代~第3世代)

■ 藤原康文教授(IntraPhoton CTO)の「赤崎勇賞」受賞コメント
まずは、これまで共に研究に取り組んできてくださった多くの研究者ならびに学生の皆様に、心より感謝申し上げます。私たちはこれまで、「半導体イントラセンターフォトニクス」という新しい学問分野の創出に取り組み、世界のメインストリームからやや離れた位置で研究を進めてまいりました。このような研究を多くの方々に見守り、評価していただいたことを大変うれしく思っております。今後は、本研究をさらに発展させるとともに、これまでの成果を学術論文にとどめるだけでなく、昨年起業した株式会社IntraPhotonを通じて社会実装へとつなげていきたいと考えております。引き続き、ご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

【会社概要】
会社名 : 株式会社IntraPhoton
代表者 : 代表取締役 本蔵 俊彦
設立 : 2025年10月6日
所在地 : 〒525-0058 滋賀県草津市野路東1丁目1-1
立命館大学 グラスルーツイノベーションセンター GICLab10
URL : https://intraphoton.com
E-mail : ip@intraphoton.com

<本件に関するお問い合わせ先>
株式会社IntraPhoton
E-mail:ip@intraphoton.com

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