日本一パンの消費量が多いまち・大津市で、パン作りに関わる人や店を紹介します。
2016~2018年の食パンとそのほかのパンの合計消費量が47都道府県の県庁所在地と指定都市の中で大津市が1位になり、年間の平均消費量は55.6キロで全国平均を24%上回っています。(総務省家計調査)
唐崎で20年以上店を構える「Woodpecker(ウッドペッカー)」。店主の佐伯貢さんは「パンに教えられ、パンに助けられている」とパンへの思いを語ります。
パンの面白さはパンに教わった
陶芸と学びたいと広島から京都に来た佐伯さん。アルバイトなどを経て、「陶芸と同じような手作業で、パンなら食べられるから」という理由で、1985(昭和60)年からパン店での修業を始めました。
「作り方もいろいろあり、少しのことで出来具合が変わります。作っているうちにパンの奥深さがだんだん見えてきました。パンの面白さは、パンが教えてくれました」と振り返ります。
自然に囲まれ、自然なパン作り
京都での出店を考えていた1995(平成7)年、大津のパン店跡を引き継がないかという声が掛かりました。佐伯さんは「大津に来てみたら、それまで修業していた岩倉から、比叡山を挟んだ向かい側で、比叡山の山と琵琶湖を見渡せ、自然が好きな私にぴったりだと思いました。住みやすくていいところで、大津に来て良かった」と話します。2007(平成19)年に前の店からほど近い現在の場所に移転しました。
店名の「ウッドペッカー」は、「キツツキは環境の変化に敏感な鳥だといわれていて、少しでも自然がなくなるといなくなると聞き、自然を大切にしたいという思いと、食べるものも無添加で自然なパンを作りたいという思いから名付けました」と話します。
「ウッドペッカー」の朝一番の客はセキレイ。「毎日、同じ2羽が店先にやってきます。春にはツバメやヒヨドリもやってきます。鳥たちに癒やされています」と笑顔を見せます。
「なるべく自然に近いものを」と、2種類の天然酵母をパンの種類と用途に合わせ使用。一般的に使われているレーズンから作る酵母ではなく、店先で育てた桑の実で天然酵母を手作りしています。佐伯さんは「桑の実の天然酵母でパンを作ると、優しい味になります。砂糖を入れなくても自然な甘みが出て、少し酸味もあり、奥深い味になります。生き物が出す味は、温度の違いで微妙に違う味になってしまい、毎日同じ味に作るのが難しい。ちょっとでも目を離すと酸味が強くなってしまうので気を抜けません」と話します。
「パンが助けてくれている」
店頭には、クリームパンやあんパン、メロンパン、クロワッサン、デニッシュなどのほか、ライ麦パンや、ラオゲンベック、クリスマス時期に販売するシュトーレンなど、ドイツのパンも多く並びます。佐伯さんは「ドイツのパンは酸味を微妙な技で出さないと、おいしい酸味にならず難しいのですが、奥深くて面白く、やりがいがあります。ほかにはないパンができるので、今後もいろいろなパンに挑戦していきたいです」と意気込みます。
「お客さんが喜んでくれるのがうれしいです。朝早くから粉にまみれて、厳しい仕事ですが、少々しんどくても、『おいしかった』と言ってもらえると頑張れます。新型コロナウイルスで飲食業界は打撃を受けましたが、中食のパンは大きな影響は受けませんでした。そういう意味でも、パンには助けられていると感じています」と話します。
パンに教えられ、パンに助けられてきたウッドペッカーの27年。これからもパンと共に歩んでいきます。
Woodpecker(ウッドペッカー)
大津市滋賀里4丁目8-19
TEL:077-525-4198
定休日:水曜日
営業時間
平日 7:00~19:00
日祝 7:00~18:00
取材・文・撮影=山中輝子