大津市の特産品「大津百町百福物語」は2015(平成27)年に大津商工会議所が始めた認定制度で、現在までに47点が認定を受けています。
大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に、「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
大津で155年伝わる伝統の組みひも
第7回は藤三郎紐(ひも)(大津市逢坂)の組みひもストラップです。4代目・太田藤三郎さんと浩一さんに話を聞きました。
1867年に大津・逢坂山の街道に初代太田藤三郎さんが米屋を開き、妻のしもさんが副職として峠を行き交う人たちに印籠のひもなどの組みひもの雑貨を置いたのが藤三郎紐の始まりとされています。
江戸時代末期は武士のよろいや刀の下げ緒、印籠のひも、神社の鈴緒などを作っていましたが、徐々に帯締めや羽織ひもの需要が増え、大正時代には組みひもに専念するようになりました。
3代目・藤三郎さんは草木染めを研究し、草木染め組みひもの技術を評価されて大津市の無形文化財の第1号に指定されました。
現在は4代目・藤三郎さんと長男の浩一さんが帯締め、羽織ひも、組みひもネクタイ、組みひもストラップなどを制作しています。
組み台で生み出す作品
組みひも作りはまず、糸を染めるところから始まります。草木染めなどで染めた糸を小枠に繰る糸繰り、組むひもの太さや玉数に合わせて小枠に取った糸を一つにまとめる糸合わせをして、八丁という機械にかけて糸をよります。寸法に合わせて切る「経尺(へいじゃく)」をしたら、綾竹台、丸台、高台、内記台などの組み台にセットして糸を組みます。組むものによって長さも本数も異なりますが、細いストラップでも60本のより合わせた糸を4本組み合わせて作ります。
木製の手動式組台である内記台は、木製の歯車で板を回し、板に糸を引っかけながら組み上げます。組んだ糸は筒状になり、しなやかで締めやすい帯締めに仕上がります。浩一さんは「江戸時代には大津の町でも内記台を使ってひもを編む音が響いていたと聞いていますが、今では動いている内記台はこの1台だけ。全国から実演に来てほしいという声がかかります」と話します。
昭和初期に作られた機械式綾竹台は複雑な模様の組みひもを作ることができます。4代目・藤三郎さんは綾竹台で組んだひもを合わせて浮世絵や般若心経などの作品も作ります。
工房では、組みひもや染色の体験会も実施。角台にセットしたひもを交互に動かして作るストラップやハンカチの草木染めなどを体験できます。
藤三郎紐の組み紐商品は着物店や和装小物店のほか、琵琶湖ホテル、びわ湖大津館の売店で扱います。
藤三郎紐
滋賀県大津市逢坂1丁目25-11
取材・文=山中輝子