大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定しています。
2015(平成27)年に大津商工会議所が始め、現在までに53点が認定を受けています。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品に携わる人にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
比叡山坂本に残る穴太衆の石積み
第16回は西洋軒(大津市坂本4)の「石積みのパン」です。
比叡山延暦寺(えんりゃくじ)の門前町である坂本に残る自然石を組み合わせた「穴太(あのう)積み」という技法で造られた石垣。これは、穴太衆と呼ばれる石工集団が手がけた石垣です。穴太衆は織田信長の命を受け安土城の城築に携わり、技術が高く評価されて、全国の大名から石垣造りの要請を受けるようになりました。
穴太衆の堅固な石積みは現在も坂本の里坊や町並みに残り、1997(平成9)年には重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
2022年に穴太衆を描いた今村翔吾さんの歴史小説「塞王の楯」が第166回直木賞を受賞したことから、さらに注目が集まっている穴太衆の石積み。
坂本の商店街にある創業100年のパン店「西洋軒」の店頭には、穴太衆の石積みをイメージした「石積みのパン」が並びます。
穴太衆の石積みイメージしたパン
パンの上部にクッキー生地を使い、パンの柔らかい食感とクッキー生地のさくさくとした食感を味わえるようにした「石積みのパン」。石積みのごつごつした見た目を表現するためにクルミとレーズンを入れています。クルミは白石を、レーズンは黒石をイメージしているそうです。
石積みのパンは春夏と秋冬で包むあんを変えています。3月から8月はうぐいすあん、9月から2月は栗あんの入った石積みのパンが味わえます。
石積みのパンを考案したのは先代の山岡延照さん。4代目の忠樹さんは「アイデアマンだった先代の叔父が坂本商店街を盛り上げようと考案しました」と振り返ります。
西洋軒の前には穴太積みの石垣があり、石垣と共に「石積みのパン」を撮影する観光客もいるそうです。忠樹さんは「リピーターも多く、全国からも問い合わせがあります。作り続けて良かったと感じています」と笑顔を見せます。
地域の土産として全国に
石積みのパンは2023年1月、「大津百町百福物語」認定商品となりました。
忠樹さんは「地域の人に長年支持されて、2代にわたり作り続けてきたことを誇りに思います。感じているのは、伝統を守らなければいけないという思いと、新たに作りださないといけないというプレッシャー。これからも地域の土産として全国に届けられるように作り続けたい」と意気込みを見せます。
「石積みのパン」は、西洋軒本店と「コープぜぜ内」にある「パン工房西洋軒ぜぜ店」で扱っています。
西洋軒
西洋軒本店
滋賀県大津市坂本4丁目14-11
電話番号:077-578-0111
営業時間:7時30分~18時30分(売り切れ次第終了)
定休日:水曜・日曜・祝日
パン工房西洋軒ぜぜ店
滋賀県大津市竜が丘1-1コープぜぜ店内
電話番号:9時~20時30分
定休日:1月1日・1月2日
取材・文=山中輝子