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銭湯「大津湯」いい風呂の日に再オープン 車いすで入れる銭湯に

大津湯店主の米谷基広さんと若女将の智也子さん

大津湯店主の米谷基広さんと若女将の智也子さん

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 銭湯「大津湯」(大津市大門通)が11月26日、「いい風呂の日」に車いすで入れる銭湯としてリニューアルオープンする。

車いすのまま入れるボディーシャワー

 「大津湯」は1959(昭和34)年に開業し、道路拡張工事での移転を経て60年間地元に親しまれてきたが、2019(平成31)年3月6日に店主の米谷基広さんが脳出血で倒れ、休業していた。妻の智也子さんは「定休日で仕入れに行く予定だったが、夫が『ちょっとしんどい』というので店に帰った。昼の1時ごろ突然転び、救急車で病院に行くと、脳が出血しているから後遺症が残ると言われた」と当時のことを振り返る。基広さんは右半身にまひが残り、言語障害もあり、要介護度3の体に。

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 智也子さんは2016(平成28)年に結婚。「仕事をしていたので、掃除を手伝う程度」だったが、2017(平成29)年に基広さんの母親が病に倒れ、その日から番台の仕事を手伝うことになった。智也子さんは「お風呂の料金も分からないまま」番台に座り、仕事を手伝い始めた。「戸惑うことばかりだったが、常連さんと毎日話をして、差し入れをもらったり、ご飯を振る舞ったり、大家族みたいで楽しかった。夫の母が亡くなった時もお客さんと思い出話をして番台で泣いていた。夫が倒れた時には『おかずをドアにぶら下げといたよ』と声を掛けてくれるお客さんも。皆優しくて、いつも心配してくれた。夫が倒れても、大津湯をやめるという選択肢はなかった」と振り返る。

 その後、智也子さんも病気で左足に障がいが残った。智也子さんは「不自由な人の気持ちが分かった。お客さんもご年配の方が多く、不安定な棚や観葉植物に寄りかかっているのが心配だったので、要介護度3の夫でも入れる銭湯にしようと思った」とリニューアルのきっかけを話す。

 浴室用の車いすを用意し、浴槽に車いすから移り変われる台を設置。車いすごと入れるボディーシャワーも設置した。靴箱やロッカーも全て作り付けにして、寄りかかっても倒れないようにした。智也子さんは「日本中どこを探しても、銭湯の料金で車いすのまま入れるお風呂はないと知って、『なんで450円で入れないのか』と思い、ないなら作ろうと思った。設計士さんや金融機関の方、看板屋さんなど、皆が私の思いをくんでくれて、それぞれに協力してくれた。大津湯の渦に入ってくれた」と感謝する。

 2019年7月に設計を依頼した後、9月に智也子さんが入院。2020年2月からは新型コロナウイルスの影響で工事が止まり、さらには当時窯場を担当していた職人が突然姿を消した。智也子さんは「お風呂が沸くか、サウナが動くか、水漏れがないかをチェックして『問題ない』と言っていたが、ふたを開けてみたら問題だらけだった。水漏れもしていて、水も濁っていた。直して点検したらまた問題が発覚しての繰り返し。それでも、26日に間に合わすために窯場の担当者が毎日来て頑張ってくれている。水をきれいにする活性炭のタンクを置く場所も大津市が貸してくれた。皆さんが助けてくれている」と話す。

 智也子さんは「デイケアでお風呂に入るためには3カ月前から予約が必要で、当日になって体調が悪ければ入れない。銭湯なら、『今日は調子がいいので行こうか』と気軽に来ていただける」と話す。

 浴室にはライオンの傍らにヤギがいる絵が飾ってある。智也子さんは「初めて絵を見た時は、どうしてこの絵なのか不思議だったが、今は『裸でお風呂に入れば皆仲良くなる』というのが夫の夢なのかもしれないと思っている。いろんな職業の人も、障がいがある人もない人も、皆が同じ目線で入れる安全で清潔なお風呂にしたい」と意気込みを見せる。

 営業時間は15時~24時。新型コロナウイルス対策のため、入場人数を3時間ごとに50人に制限する。水曜定休。入浴料は450円(サウナ100円)。

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