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立命館大学教員、日本ミステリー大賞新人賞受賞作「馬疫」発刊 ウイルスとの対決描く

小説「馬疫」の筆者、茜灯里さん

小説「馬疫」の筆者、茜灯里さん

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 立命館大学総合科学技術研究機構(草津市野路東)の助教、茜灯里(あかり)さんの日本ミステリー大賞新人賞作品「馬疫」が2月25日、発刊された。

馬術選手経験もあり、獣医師でもある茜灯里さん

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 2020年10月に第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した「馬疫」は、欧州での新型コロナウイルス感染拡大を受け、オリンピックが東京で再び開催されることになった2024年の日本を舞台に展開する。五輪提供馬の審査会で複数の馬が馬インフルエンザの症状を示す。ウイルスの正体は「新型馬インフルエンザ」。感染した馬を凶暴にさせてしまう「狂騒型」だった。主人公の獣医師、一ノ瀬駿美がパンデミックに立ち向かうという「理系ミステリー」作品。

 茜さんは「新人賞を受賞するためには『自分はこれだけは他人には負けない』というアピールポイントが求められる。私は馬術選手経験もあり、馬の獣医師もしていた。競馬に携わる先生と共同研究をしたこともある。馬を多方面から語れて、科学的に謎解きする話を作れるのは私のアピールポイントだと考えた。選考委員の先生にも『今までに読んだことがないタイプの話だった』と評価していただけた」と振り返る。

 茜さんが作品を執筆したのは新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年2月から3月。茜さんは「新型コロナも恐ろしいが、人獣共通感染症という観点からはインフルエンザは最も恐ろしい感染症だという感覚が以前からあった。新型コロナがここまで広まり、2021年の現在、いまだ収束していないという状況は予想していなかった。作品の中では『あり得る最悪の状況』としてウイルスの変異やワクチン問題に触れていたので、現実で作中の予言が当たってしまって、驚くとともに心が痛い」と話す。

 「主人公の一ノ瀬駿美は、身内に嫌疑が掛かったからではなく、専門家としての使命、プライドから事件を解明しようとする。さらに、身内をかばうことよりも真実を貫くことを選ぶ。現実でも何が正しい行いなのかはケース・バイ・ケースで難しいが、『誠実で正しい行いは隠ぺいや忖度(そんたく)に打ち勝つ。だから、勇気を持って自分が信じる行動をしよう』ということを伝えたかった」とも。

 茜さんは「作家として一番大切なのは、面白い小説を書き続けること。私の小説のキャッチフレーズは『今の世相を反映して、あり得る未来を描く』。今後も『もしかしたらこんな未来がやってくるのかも』と読者の方がドキドキわくわくする小説を書いていきたい。その結果、科学を身近に感じるきっかけにもなればうれしい」と話す。

 四六判、367ページ。価格は1,870円。

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