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守山市在住のピアニスト、大正時代の久野久リサイタルを再現

久野久に焦点を当てたリサイタルを開催するピアニストの久間あゆみさん

久野久に焦点を当てたリサイタルを開催するピアニストの久間あゆみさん

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 守山市在住の久間(きゅうま)あゆみさんのピアノソロリサイタル「滋賀県出身ピアニスト久野久に寄せてvol.2“西の異境へ、託した願いと散った想い”」が3月21日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(大津市打出浜)で開催される。

パンフレットにも久野久への思いを込めた

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 滋賀県出身の久野久(くのひさ)に焦点を当てた演奏会で、久野が1923(大正12)年2月に演奏した「オール・ベートーベン・プログラム」のリサイタルと同じプログラムで、ピアノソナタの4曲を演奏する。演奏するのはピアノソナタ第26番「告別」、29番「ハンマークラヴィーア」、31番、32番。久間さんは「これだけの規模の大きな曲を立て続けに、女性が弾くことは並大抵ではない。特に1曲だけで40~50分もかかる『ハンマーグラヴィーア』は、世界的なピアニストからも最難関だと言われ、ベートーベンも『50年は演奏できる人はいない』と言っていたほど。大正時代にこれだけのプログラムをやり切ろうとした久野さんの情熱が伝われば」と話す。

 久野は「オール・ベートーベン」リサイタルの後にヨーロッパに文化庁の任命で海外派遣されるが、1925(大正14)年、ウィーンのホテルから身を投げて自殺する。久間さんは「ようやく西洋に追い付けるピアニストが現れたという世間の期待を背負い、自分だけの人生ではなくなった久野さん。未知の海外に渡る不安は想像を絶するものだったと思う」と思いを寄せる。

 久野は着物でピアノを演奏し、ヨーロッパに渡ってからも着物で過ごした。久間さんは「久野さんは西洋の文化に合わすことができなかったのだと思う。久野さんの大胆さと繊細さを表現したい」と、今回の演奏会は久間さんも着物でピアノを演奏する。「海外との往来が当たり前になった今、彼女のような先人の存在を忘れないためにも久野さんを取り上げたかった」と振り返る。

 新型コロナウイルス感染拡大防止対策を取っての開催となる。久間さんは「静かなクラシックでは感染のリスクが低いという研究結果が出ていることを前提に、働くべき人が働くことに意味があると考えている。それでも、個別の声掛けは控えた。私が声を掛けると、高齢の方も絶対に行かなければと無理をされてしまうかもしれないと思い、案内することは控えた。ピアノのソリストのような演奏形態の人が演奏会を存続しないと、舞台に出掛ける習慣そのものが無くなりかねない。舞台芸術を支えてくださる人が職を失うことにもなる。そんな葛藤を抱えながらの開催となった」と話す。

 2020年3月にも久野に焦点を当てたリサイタルを開催している。「前編では久野さんの栄光までを取り上げた。今回の後編は、久野さんの生き方を通して、私たちの生き方や社会の在り方を考える場になれば。作品や作曲家が主役ではなく、人物に焦点を当てた演奏会。実際に生きていた人だからこそ、お客さんにも伝わる感情があると思う。久野さんの最終章も、スタミナが尽きないように頑張りたい」と意気込みを見せる。

 開催時間は13時30分~。料金は大人=3,000円、学生=1,500円。

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