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琵琶湖の水草を短時間で堆肥化 「嫌われ者の水草が役に立つ」

水草堆肥で育て、大きく育った野菜を持つWEF技術開発の青山章さん

水草堆肥で育て、大きく育った野菜を持つWEF技術開発の青山章さん

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 WEF技術開発(大津市堂)が、短期間で琵琶湖の水草を堆肥化する技術開発に成功した。

琵琶湖の水草は年間5000~6000トン刈り取られている

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 琵琶湖の水草は酸素の供給や水質浄化、魚類の産卵場、生息地としての役割などを果たしているが、1994(平成6)年の渇水が原因で増加し始め、大量繁茂が問題となっている。水草の大量繁茂により、腐敗による悪臭や、漁業活動への影響、水の流動を停滞させることにより湖沼環境が悪くなるなどの影響がある。滋賀県は2016(平成28)年から水草等対策技術開発支援事業を実施し、水草対策の技術開発や有効利用を支援している。

 工場設備のメンテナンス事業をしていたアオヤマエコシステム(大津市堂)は、2016(平成28)年に水処理・廃棄物リサイクル事業部を分離独立させ、WEF技術開発を設立。滋賀県が年間5000~6000トンの水草を刈り取り、堆肥にしていたが、水草は含水率が98%で、乾燥して自然発酵し、堆肥にするのに3年かかっていた。WEF技術開発社長の青山章さんは「毎年大量に刈り取られる水草を大量に利用するには、農業に利用するのが一番だと思ったが、熱処理で乾燥させるとコストがかかるのが問題だった。低コストで大量に処理する方法はないかと模索した」と振り返る。

 空気中の酸素から活性酸素を作り、廃棄物のリサイクルに利用していたが、その技術を水草の処理に活用。活性酸素で処理すると水草が1時間で10分の1に減量化でき、活性酸素が細胞膜を分解するため、微生物が食べやすい状態になることを発見。分解された水草に米ぬかや菌を混ぜて5~10日で堆肥化することに成功した。

 出来上がった堆肥はマグネシウムの含有量が多く、作物が大きく甘くなるという効果もあった。米ぬかを入れることで連作障害も防ぎ、水草には温度や風などの「非生物的ストレス」を抑制する「バイオスティミュラント効果」があることも分かった。青山さんは「水草で作った堆肥使うことで野菜が大きく甘く育ち、栄養価も高くなり、収穫量を増やすこともできる。嫌われ者の水草が役に立つ。農家は野菜の価値を上げることができ、消費者はおいしくて栄養価の高い野菜を食べることができる。これが循環していけば食糧問題の解決にもつながるのではないか」と話す。

 「水草の堆肥化事業を本格化させ、堆肥を使って育てた野菜を統一ブランドとして販売したい。水草は琵琶湖だけでなく国内外でも問題になっている。活性酸素処理装置の販売や製造ノウハウを事業展開し、良質で低価格の有機肥料を広めていきたい」とも。

 活性酸素で粉末化した琵琶湖の水草はガラスや革製品の着色にも利用されている。ガラスの中に溶け込ませて着色した「琵琶湖彩ガラス」や、ブラックバスの皮に水草で着色した「WEED DYE COLLECTION」として商品化されている。

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