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大津の中学生が絵本 琵琶湖の魚を色鮮やかに「琵琶湖好きの仲間を増やしたい」

絵本「はじめてのびわこの魚」を持つ作者の黒川琉伊さん

絵本「はじめてのびわこの魚」を持つ作者の黒川琉伊さん

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 大津市の中学生が描いた絵本「はじめてのびわこの魚」が7月1日のびわ湖の日に出版される。

7月1日のびわ湖の日に出版される「はじめてのびわこの魚」

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 大津市在住の中学3年生、黒川琉伊さんが色鉛筆で鮮やかに描いた琵琶湖の魚が50種掲載された絵本で、絵の周りには琉伊さんが調べた魚の説明や「さしみ・フライで極旨!」「かまれるといたい!」(原文ママ)など、琉伊さんの体験や漁師に聞いた話が書かれてある。琵琶湖の固有種や絶滅危惧種、外来種などが分かるマークも付けた。琵琶湖博物館の学芸員、金尾滋史さんが琉伊さんの書いた説明文をチェックした。

 琉伊さんが大津に越してきた2歳の時、母親の雅世さんがアニメ「スイスイ!フィジー!」のDVDを借りてきたことが魚との出合い。興味を示した琉伊さんに「本物の魚を見せたい」と、毎日、琵琶湖博物館に通うようになった。

 雅世さんは「ある日突然、『水槽の中の魚が変わっている』と言い出した。足を止めて見るようになり、3歳になるまでに全ての魚を覚えた」と話す。雅世さんは「魚の名前を読むために平仮名より先に片仮名を覚えた。幼稚園で皆が両親の絵を描くときに琉伊だけ魚の絵を描いていた」と振り返る。

 琉伊さんは小学2年生時に外来魚駆除大会に出場して優勝し、景品として60センチの水槽をもらう。琵琶湖の固有種であるワタカとゲンゴロウブナを譲り受け、毎日観察していたが、半年後、捕まえたカワヨシノボリを水槽に入れたところ、ワタカが少しずつ減り始めた。ある日、カワヨシノボリの口からワタカの尾が出ているところを見かけた琉伊さんはショックを受ける。「ヨシノボリが肉食だと知らなかった。魚を飼うなら調べてからでないといけない」と、魚を捕る、見るだけでなく、より深く調べるようになった。

 小学4年生の時、家族で「琵琶湖まで30秒」の場所に引っ越しをする。「水のきれいなところで、琵琶湖まで近く、自由に魚を捕りに行ける場所」として近江舞子を選んだ。琉伊さんが琵琶湖で魚を捕り、裏口から入り、土間に置いた水槽に魚を入れ、浴室に直行できるような間取りにした。

 小学5年の時にはて次世代リーダー育成事業「ラムサールびわっこ大使」に選出され、滋賀県代表として世界湖沼会議に出席。魚の産卵に興味を持った琉伊さんは、「ジュニアドクター育成塾」で現在も研究を続けている。琉伊さんは「調べ尽くしたと思ってもまた謎が出てくる」と話す。

 2021年、琉伊さんの描く魚の絵に魅せられた長浜市の出版社・能美舎の堀江昌史(まさみ)さんが本の出版を勧めた。琉伊さんが滋賀県の県鳥でもあるカイツブリが釣り糸に絡まっているのを見て、ごみを捨てた人に怒っていると、雅世さんが「未来は変えられる。自然が好きな子どもなら、ごみを捨てる大人にならないかもしれない」と声をかけ、琉伊さんが「魚に興味を持ってもらって、琵琶湖が好きな仲間を増やしたい」と1年かけて魚の絵を描き、絵本を完成させた。

 魚は繁殖期には鮮やかな「婚姻色」の体色になる。雅世さんは「琵琶湖の魚のイラストは黒や灰色が多いが、漁師や釣りをする人は琉伊の絵を見て、こんな色だと言ってくれる。琉伊の絵が正解なのだと知った。きれいな色の魚を見て、好きになって、川や琵琶湖に観察に行ってもらえれば」と話す。絵本にはコピーして記入できる「かんさつにっき」のページを付けた。

 A4判、48ページ。価格は1,650円。

 7月1日~8日には和邇図書館(大津市和邇)で原画展を開催する。3日13時30分からは「はじめてのびわこの魚」の寄贈セレモニーと、琉伊さんの講演会「おさかな教室」を行う。

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