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児童養護施設守山学園新園舎 「建物が子どもたちにできること」

(写真左から)建築士の藤木庸介さん、守山学園施設長の谷村さん、副施設長の吉川さん

(写真左から)建築士の藤木庸介さん、守山学園施設長の谷村さん、副施設長の吉川さん

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 児童養護施設「守山学園かさはらの家」(守山市笠原町)の新園舎が10月31日に完成し、12月1日から利用が始まる。

子どもたちが暮らすリビングには夕日が入るように設計した

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 木造平屋建て、延べ床面積約1140平方メートルで、メイン棟には多目的ホール、ショートステイ用の宿泊施設があり、敷地内に住居棟8部屋、自立支援棟6部屋と、一時保護専用6部屋がある。県内で児童養護施設に一時保護専用棟があるのは守山学園だけ。

 同園は1959(昭和34)年に開園。1990(平成2)年に現在の場所に移転した。建物は補修を繰り返したが、30年がたち、足場が朽ちたベランダや穴の開いた壁など、老朽化が目立っていた。2018(平成30)年に施設長になった谷村太さんが「来た次の日に床が抜けたと聞いて、このままではいけない、危険だ」と建て替えを計画し始めた。

 県と市からの補助金を4億円と見込み、借入金などを含めて6億円で建て替えの計画をしていたが、補助金が1億6,000万円になることが決まる。2階建ての予定を平屋建てにして部屋数を減らしたが、「受け入れられる子どもの人数が限られてしまうのでこれ以上減らしたくない」と、2020年12月からクラウドファンディングで支援を募った。クラウドファンディングで800万円と寄付金2,000万円以上が集まり、足りない資金は借り入れて園舎を建て替えた。

 谷村さんは「クラウドファンディングをしたことで、多くの人に知ってもらえて、直接寄付を持ってきてくれる人や、果物を送ってくれる人など付き合いが増えた」と振り返る。

 一時保護専用棟では、児童相談所が虐待などで緊急の保護措置がある場合に保護し、守山学園が受け入れる。谷村さんは「子ども家庭相談センターの一時保護所にいる子どもは学校に通うことができない。最長で半年通えない子もいる。児童養護施設の一時保護所なら学校に通うことができる」と話す。

 児童福祉法では児童養護施設などで暮らせる年齢は原則18歳未満と定められており、18歳になると施設を出なければならない子どもたちのために自立支援棟を造った。部屋内にキッチンやユニットバスなどを備え、1人暮らしの練習ができるようにした。施設にいる子どもの母親が施設に来て一時的に一緒に暮らす親子再統合支援のための部屋も設けた。

 設計を担当した滋賀県立大学教授の藤木庸介さんは「補助金が減額になり、何度も設計をし直したが、『子どもたちにいい記憶を残す』というコンセプトは変えないようにした」と振り返る。「高校を卒業し、施設から出ていく時に桜並木で送り出して、『暮らしていた所は桜のきれいな所だった』という記憶を残したい」と、建て替え前からあった桜の木を残し、追加で植えて、園舎の前に桜並木を作る。

 建物全てに夕日が入る窓を作り、白い壁に夕日が当たって部屋がオレンジ色に染まるように設計した。藤木さんは「夕焼けがきれいな琵琶湖の東側の地域の特性を生かして、『夕方の一瞬だけ、部屋がオレンジ色に染まったな。湖東はそういう所だったな』という記憶を残すことが、子どもたちに建物がしてあげられることだと思う」と話した。

 現在仮の施設で暮らしている子どもたちは12月1日から入居し、ショートステイ、一時保護は2023年4月から受け入れる予定。

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