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担架になる看板「タンカん板」草津市役所に寄贈 「誰でも救助活動に参加」

草津市役所に寄贈された「タンカん板」

草津市役所に寄贈された「タンカん板」

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 クラウドナイン(草津市渋川)が11月20日、緊急時に担架として使用できる看板「タンカん板(たんかんばん)」を草津市役所に寄贈した。

「タンカん板」に人を載せて運ぶクラウドナインの和田さんと市役所の職員

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 「タンカん板」は、通常は看板として店先などに設置し、緊急時には背面のスタンド脚を外し裏返すことで担架として使用できる。背面のマット部分は発泡スチロール素材で、衝撃を和らげ、水に浮くので水害時には浮き輪としても利用できる。フレームはアルミ製で、持ち手部分をアーチ状にすることで力が入れやすく、複数でも持ちやすい構造になっている。看板には両面に印刷することができ、表面は宣伝、裏面は「緊急避難場所」と印刷して使うこともできる。スタンド型と壁掛け型があり、飲食店や工事現場、学校での使用を見込んでいる。

 草津市役所に寄贈されたのは縦182センチ、横91センチのスタンド型看板で、両面に草津市のPRを印刷し、市役所のロビーに設置された。

 開発のきっかけはクラウドナイン社長の和田法久さんが草津駅で転倒した小学生を周りの大人が助けようとしなかった場面に遭遇したこと。和田さんは「エスカレーターに乗っていた時、降り口でランドセルを背負って両手に荷物を持った小学生が倒れているのに、皆がよけて通っていた。私が駆け寄り、子どもを抱えて駅員に救護を頼んだ。新型コロナウイルスの流行で人に触れることに抵抗があったのかもしれないが、困っている人を助けるという意識が薄れているのではないかと感じた」と振り返る。

 「いざという時に迷わずに人を助ける行動につながる物を作りたい」と、知り合いに声をかけ、フィットネスジム、飲食店、英会話教室などそれぞれ別の事業を行ってきた5人で2022年5月に起業。飲食店「ミソラテラス」(草津市渋川)店主の大道洋一さんは「世の中の役に立つことがしたいと思っていた時に和田さんと出会い、意気投合した。人が人を助ける世の中にしたい」と話す。

 5人でアイデアを出し合い、看板製作会社の協力を得て、「力のない人でも助けられるように」と工夫を重ね、商品化した。

 和田さんは「担架はあるが備蓄室に置いているという話を聞いて、それでは緊急時に使えない。常に人目に付く場所に置き、普段から『あそこに担架がある』と皆に知ってもらうには看板が一番いいと思った。担架がある場所を知っていて、力のない人でも持つことができることを知っていれば、迷わずに救助活動に参加できるのではないか」と話す。

 「タンカん板」を購入した草津市野路町内会の防災訓練では、子どもたちが「タンカん板」で人を運ぶ体験をした。和田さんは「人に助けられる喜びだけでなく、人を助ける喜びも感じてもらいたい」と話す。

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