大津と京都を結ぶ観光船「びわ湖疏水船」の累計乗船者数が4月13日、5万人を超えた。
琵琶湖疏水は1890(明治23)年に完成した琵琶湖の水を京都に引くために作られた人工運河。明治維新後衰退した京都を琵琶湖の水利によって復興させるために建設され、水力発電、舟運、遊覧船の運航などに使用された。陸運の発達により、船の運航は1951(昭和26)年に途絶えた。
2018(平成30)年、船の運航が途絶えて以来67年ぶりに観光船として本格運行を始めた。春季(3月~6月)と秋季(10月~11月)に大津から山科を経由して蹴上まで行く下り便と蹴上から大津までの上り便を運航。約7.8キロの船旅では、桜や紅葉、明治期に作られた約2.4キロのトンネル、有形文化財の「旧御所水道ポンプ室」などを間近で見ることができる。
運航を再開してから6年目で累計乗船者数が5万人に到達した13日には、大津乗下船場(大津市三井寺町)で達成記念セレモニーが行われた。5万人目は広島県から来た廣田克枝さん。廣田さんには、「びわ湖疏水船」の乗船券と琵琶湖疏水グッズ、大津市観光キャラクターの「おおつ光ルくん」グッズが贈られた。
廣田さんは「昨年、京都観光で山科のインクラインを歩き、船を見つけた。乗ってみたいと思い駆け付けたが、予約しないと乗船できず、その時はあきらめた。京都で学生時代を過ごしたので琵琶湖疏水の歴史は知っていたが、過去の遺産ではなく今もまだあることを知り、乗りたいと思いを募らせた。今年は予約して、友達と一緒に乗船した。5万人目と聞いて驚いた」と話した。
「緑がすがすがしく、景色がきれいだった。ガイドの説明で琵琶湖疏水がどのような役割を果たしてきたかを知った。明治の時代に人の力でこれだけの事業をできたところが素晴らしい。100年先を考えて作った先人の知恵に熱いものを感じた。桜や紅葉の季節に再度乗船したい」とも。
「びわ湖疏水船」は現在、蹴上から大津三井寺付近までで運航しているが、来年度以降に琵琶湖まで航路を2キロ延伸し、大津港(浜大津)まで運行する予定。