国指定重要文化財の木造十一面観音立像が3月7日、修理を終えて福林寺(守山市木浜町)に戻された。
井上靖が「ひたすらに気品高い観音像である」と表現した十一面観音立像
十一面観音立像は、像高166.2センチ、一木造りで、重要文化財に指定されており、最澄作と伝えられている。右脇腹と右胸の彩色(絵具面)の浮きや、頬のひび割れがあったことから、2023年5月から京都国立博物館内の文化財保存修理所で美術院が保全修理を行っていた。前回の修理は1920(大正9)年で、約100年ぶりの修理となった。
ハスの台座の上に立ち、少し右に体をひねり頭に十一の仏面を頂く姿は、作家の井上靖が「星と祭」の中で「咲く花の匂うような天平の貴人が一人、そこに立っている感じである。ひたすらに気品高い観音像である」と表現した。
美術院の修理技術者の浜田史さんは「にかわとふのりで腹部、胸部の彩色の剥落止めをした。重要文化財に指定されており、今の状態で美しいと認定されているので、色彩は補っていない。大正時代に修理した部分が色落ちしていたので再度、本体に近い色に修正した」と話す。
高木慈恵住職は「1年ぶりにお会いできて感無量。皆さんのおかげで今日を迎えることができた。日本一のべっぴんさんの姿に直してもらえて、言葉では言い表せないほど感謝している」と喜びの表情を見せた。
一般公開は本堂の修理完了後の2025年10月を予定している。