中主小学校(野洲市西河原)の4年生の児童が6月17日、「魚のゆりかご水田」で捕獲した魚を観察する体験学習を行った。
水路に階段状の魚道を整備し、魚が水路と水田を行き来できるようにした魚のゆりかご水田
ほ場整備前の琵琶湖周辺では水田がフナやコイ、ナマズなどの湖魚が遡上(そじょう)して産んだ卵からかえった稚魚が育つ「魚のゆりかご」になっていたが、ほ場整備後は琵琶湖から水路、水田に遡上することができなくなった。滋賀県が呼びかけ、2007(平成19)年ごろから「魚のゆりかご水田プロジェクト」がスタート。同小学校近くの「せせらぎの郷(さと)須原」でも、水路に階段状の魚道を整備し、魚が水路と水田を行き来できるようにして「魚のゆりかご水田」の復活に取り組むとともに生態系の保全と環境に配慮した米作りを行っている。
2022年7月に「魚のゆりかご水田」を含む琵琶湖と共生する滋賀県の農林水産業「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」(通称=琵琶湖システム)が国連食糧農業機関(FAO)提唱の世界農業遺産(GIAHS)に認定されたことを受け昨年から、同小学校は「魚のゆりかご水田」を学ぶ体験学習を行っている。12日にはせせらぎの郷須原のスタッフや滋賀県農政水産部の職員などが「魚のゆりかご水田」についての事前授業を行った。
17日は、4年生の児童約90人が水田に出向き、水路の魚を捕獲して観察。魚が遡上できるのは大雨が降った後のみだが今年は雨が少なかった影響で遡上数が少なく体も小さかったものの、児童は網で水路の中を探り、1センチから3センチほどのニゴロブナやナマズの稚魚を捕まえていた。せせらぎの郷須原スタッフの八尋由佳さんは「魚を取ったことがない子どもが多く、驚きながら捕まえている。自然に触れる機会となったのでよかった」と喜ぶ。
捕獲した稚魚は小学校で育て、秋に琵琶湖に放流する。同小学校校長の井上善之さんは「今は1センチほどの魚が大きくなっていくのを毎日見て実感できる。中主に世界農業遺産があるということを知らない児童も多い。住んでいる町に誇りを持ってもらうきっかけにしたい」と話す。