大津市の特産品「大津百町百福物語」は2015(平成27)年に大津商工会議所が始めた認定制度で、現在までに47点が認定を受けています。
大津が生み出した素材、歴史、文化、技術などに深く関わりを持つものを中心に、「高い品質である」と認められた食品と工芸品を大津商工会議所が「大津百町百福物語」ブランドとして認定。
びわ湖大津経済新聞では、地元で愛される「大津百町百福物語」認定商品にスポットを当て、特集記事を公開していきます。
京の玄関口・大津追分の「走り井餅」
第4回は江戸時代から大津に伝わる和菓子「走り井餅」です。
百人一首にも詠まれた逢坂山は京の都と近江の間にあり、逢坂越えの大津追分は京の玄関口として栄え、道幅の狭い街道の両側には町屋がひしめき合い、茶屋や土産物を売る店が並んでいました。
大津追分には水が勢いよく湧き出す井戸があり、「走井(はしりい)」と呼ばれ、道行く人たちののどを潤していました。江戸時代の中頃、走井の井戸水と近江の米で餅を作ったのが「走り井餅」の始まりとされています。
細長い形は井戸の水しぶきを表し、とがった両端は刀鍛冶・宗近が走井の水で鍛えた名刀に似ていて、走り井餅を食べれば道中剣難を免れられると、旅人たちが縁起を担いで食べたそうです。
大津追分の茶屋では「走り井餅」が並び、東海道の名物となりました。
「走り井餅」の伝統を受け継ぐ
「走り井餅」の創業は1764(明和元)年。明治初期には茶屋は姿を消しますが、走り井餅の製法は創業者の末裔(まつえい)に伝承されました。
現在は、伝統を途絶えさせないために「走り井餅本家」の名と製法を受け継ぎ、走り井餅の発祥の地である大津追分に店を構え、走り井餅を販売しています。
白・きな粉・抹茶の3種類の餅でこしあんを包んだ素朴な味わいの大津土産です。
大津の伝統を受け継ぐ走り井餅は2015(平成27)年、大津百町百福物語に認定されました。
走り井餅は追分店、名神高速大津SA・草津PA、雄琴温泉各旅館売店、琵琶湖ホテル、大津プリンスホテル、道の駅などで販売中。
走り井餅本家・追分店
滋賀県大津市横木1丁目3-3
TEL:077-528-2121
https://www.hashiriimochi.co.jp/
取材・文=山中輝子