特集

【パン好きのまち大津 Vol.2】 中庄「ブーランジュリー フェルム」

  • 14

  •  

日本一パンの消費量が多いまち・大津市で、パンづくりに関わる人や店を紹介します。

2016~18年食パンとそのほかのパンの合計消費量が47都道府県の県庁所在地と指定都市の中で大津市が1。年間の平均消費量は55.6キロで全国平均を24%上回っています。(総務省家計調査)

 

パン好きのまち、大津市でパンと向き合い、理想のパンを追い求めるBoulangerie FERME(ブーランジュリー フェルム)を紹介します。

「発酵」と向き合いパンを作る

 店名の由来はフランス語で発酵を意味する「fermentation(フェルマンタシオン)」。「発酵と常に向き合っていきたい」という店主の林裕作さんの心意気が込められています。「ferme」には農場の意味があり、「発酵」と「農場」の2つの意味を掛け合わせ、「フェルム」と名付けました。「発酵と向き合う」とは? 林さんに話をうかがいました。

 人気の「パン・ド・ミ」は、林さんが自信を持って薦める食パン。炊きたての白いご飯をイメージして作られています。生地の温度を低く保ち、パン酵母の量を少なくして、発酵を抑えて熟成をすすめた食パンは、モチモチとした食感が2日後まで持続します。この作業には微妙な見極めが必要とのこと。発酵と向き合うことで絶妙な食パンの食感が生まれました。

 小麦粉やバターなどの素材にもこだわり、生地の仕込みには通常の2倍の時間をかけてじっくりと生地をつなげているそうです。時間をかけることで水分が小麦粉の中心まで浸透して、食パンの耳までしっとりと潤い、柔らかさが持続します。

 あめ色の焼き色で耳もおいしく、かむほどに甘みとうま味を感じられ、モチモチの食感を保ちながらも口溶けの良い食パンです。

20年かけてたどり着いたバゲット

 クラスト(皮)はザクザクとして、クラム(中身)はモチッとしていて翌朝もしっとりをしていてみずみずしいバゲット。林さんは「このバゲットにたどり着くまでに20年かかった」と話します。「20年前、パン店で働くことを決めた頃に出合ったバゲットに衝撃を受けました。ザクザクの食感で、甘み、うま味、深い味わいがあり、後味に心地良い甘みが残り、日本人好みのモチッとしたクラム。堅い、パサパサして味がしないといったフランスパンに対する固定概念を覆すバゲットでした」と振り返ります。

 バゲットもパン酵母の量を減らし、定温で長時間発酵して「発酵と向き合う」ことで今の味にたどり着いたとのこと。


食感を追求したクロワッサン

 クロワッサンを購入した大津市在住の女性は「サクサクの食感で、中はしっとりとしていておいしい」と1年前から通っているそうです。林さんは「サクサクを通り越してパリパリとしたインパクトのある食感にしたくて、12層、24層と試してみて、16層に決めた。発酵バターの芳醇な風味と発酵による味わい、余韻として残る甘みを感じていただきたい」と話します。

 ほかにも、「クリームチーズレーズン」「パン屋さんの栗最中(もなか)」など、趣向を凝らしたパンが店頭に並びます。

 食感、口溶け、弾力、味の余韻、日持ちなど鮮明にイメージして、ピンポイントで狙ってパンを作る林さん。「パンは温度、湿度、粉の状態など不確定要素が多く、イメージ通りのバランスに仕上げることが難しいが、同時にそれがパン作りの最大の面白さ。こうしたらこうなるのではないかと予想を立てて作っても、うまくいかないこともあります。思いもよらないことが起こるとき、実は大きな発見があります。失敗もプラスに捉えて、何かを学ぼうとすると、大きな気付きにつながります」とパン作りの奥深さを語ります。

 

■店舗情報

Boulangerie FERME

滋賀県大津市中庄1-18-20

TEL077-548-8072

定休日:日曜・月曜

営業時間:830分~1730

Boulangerie FERME インスタグラム

 

取材・文・撮影=山中輝子

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース