滋賀の未来を担う子どもを育成するための事業「令和2年度ラムサールびわっこ大使」事業の世代間交流会が12月26日、琵琶湖博物館(草津市下物町)で開催された。
グループワークでは、小学5年生から社会人の参加者が琵琶湖についてディスカッションをした
琵琶湖の保全活動や漁業、農業などを学び、次世代のリーダーを育成することを目的に2008(平成20)年に始まった事業。本年度は「琵琶湖をめぐる農業・漁業の現場から自然と共生する暮らしを学ぶ」をテーマに県内の小学6年生3人と5年生5人が学習をしている。
大使に選ばれた子どもたちは8月に「魚のゆりかご水田」を見学し、10月に「エリ漁」に同行するなど「琵琶湖システム」について学んだ。琵琶湖周辺には、ニゴロブナなどの湖魚が産卵のために琵琶湖から遡上(そじょう)する水田があり、稚魚が水田で育ち、琵琶湖に帰ることから「魚のゆりかご水田」と呼ばれている。矢印型に棒を立て、行き止まりに誘導し、必要な分だけ捕獲する持続可能な漁業「エリ漁」や「魚のゆりかご水田」は、琵琶湖と共生する農林水産業「琵琶湖システム」として日本農業遺産に認定されている。
2回の学習会で琵琶湖の環境を学んだ「令和2年度ラムサールびわっこ大使」8人と、過去にびわっこ大使として活動した卒業生19人が集まり、交流会を実施した。例年は湖魚の調理実習などを行うが、本年度は新型コロナウイルスの影響でワークショップのみとなった。
ワークショップは「琵琶湖の価値について考える」をテーマに、「水源となっている」「たくさんの生き物がいる」「食材を生み出す」「観光資源」などの中から、一番大切だと思うものを頂点にピラミッド型に配置し、なぜそう思うのかを発表した。その後、Zoomによる参加者も含めてグループワークを行い、それぞれが思う琵琶湖の価値についてディスカッションした。淡海環境保全財団の菊池玲奈さんは「ディスカッションや講師の話を聞いて、最初に自分だけで考えたピラミッドと大きく変わった人もいた。何が正解かを決めるのではなく、物事の見方、捉え方の多様性について一人一人がしっかりと発言していた」と振り返る。
菊池さんは「卒業生の中には活動をきっかけに環境に興味を持ち、滋賀県庁の循環社会推進課の職員となった人や、大学で環境について研究をしている人がいる。交流会に県職員となった卒業生が参加してくれた」と喜ぶ。「子どもたちには自分の目で確かめ、考え、行動する力を育んでほしい。ネットで調べて『正解』を見つけるのではなく、動き続ける社会や環境の動向に興味を持ち、人に会って話を聞き、自分自身で考え続け、仲間と分かち合いながら高めていく力を身に付けてほしい。びわっこ大使の子どもたちはそういった力がぐんと育っている」と期待を寄せる。