滋賀県版SDGsボードゲーム「サスティナブル・ワールド・ボードゲーム」が4月27日、お披露目された。
SDGsに関する取り組み事例を分かりやすく楽しみながら学ぶツールとして、未来技術推進協会(東京都千代田区)が開発した日本全国版のSDGsボードゲームを滋賀県版にしたもので、地方版は滋賀県が初めて。
すごろくのように滋賀県地図を回りながら、ミッションにチャレンジする。ミッションカードは滋賀県内の実際の企業や団体が行ったSDGsの事例が記載されている。滋賀県版は「あもる」(守山市吉身)の代表島田利恵さんが中心となって作成した。SDGsボードゲームのファシリテーターの島田さんが「地元企業の事例の方がSDGsを『自分事』に感じられるのではないか」と感じ、協会に滋賀県版の作成を依頼。2020年11月、12月の2カ月間で70社に取材し、事例を集めた。
島田さんは「滋賀には昔から『売り手よし、買い手よし、世間よし』の『三方よし』の考え方が根付いている。酒蔵が酒造りには良い米、良い水が必要で、そのために周りの環境を考えて行っていたことがSDGsに当てはまっていたなど、企業の8割ほどはSDGsを知らずにSDGsの取り組みをしていたことに驚いた。ほとんどが『この会社、ええことしてはる』と紹介していただいたので、本当にいい事例が集まった」と振り返る。
「日本全国版と滋賀版のボードゲームを体験してもらうと、滋賀版の方が皆さんの反応が良く、ミッションカードをよく読んでもらえた。知っている企業の事例が書かれているとSDGsをより身近に感じられる」とも。
ゲームはプレーヤーが「大企業」「慈善団体」などの役割に分かれてプレーする。役割によって年間予算が異なり、各自はランクアップ(自己成長)と17のSDGsの達成(世界を良くする)ことを目指す。年間予算は自己投資をしてランクアップを目指すことと、ミッションのために使う。自分の引いたミッションの予算が足りないときはほかのプレーヤーに「協業」をお願いして資金を集めることもできる。島田さんは「協業をお願いするためにはプレゼン能力も必要。日本は国連の評価では、SDGs17番のパートナーシップが『達成にほど遠い』とされている。ゲームを通してコミュニケーションの大切さも知ってもらえる」と話す。
滋賀県版の事例ではSDGs5番の「ジェンダー平等の実現」や2番「飢餓をゼロに」が達成できない。島田さんは「国連の評価で課題が多いとされている目標は、このボードゲームでも達成できない。事例を探しても出てこない。日本の縮図だと思う」と話す。
5月20日の滋賀県版SDGs体験会に参加した恵谷友紀子さんは「自分がレベルアップするとできることが増えるので、本当は最初から全額自己投資にしたかったが、周りの目が気になってできなかった」と話した。島田さんは「日本人は遠慮しがちだが、SDGsを達成するためにはまず自分がレベルアップすることが必要で、レベルアップすると世界に役立つことができる。そのためには、『私は先に自己投資します』といった会話も大切」と話す。
松井栄里さんは「SDGsは知っているつもりだが知らなかった。ゲームをしてみてどういうものか実感できた」と話した。島田さんは「世界を良くするためには、SDGsを知っている人を増やすことが大事。ボードゲームで気づいてもらえればうれしい」と話す。
ボードゲームの市販予定はない。県内の高校の授業や会社の研修会などに出向き、体験会を実施する。