琵琶湖と共生する滋賀県の農林水産業「森・里・湖(うみ)に育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」(通称=琵琶湖システム)が7月18日、国連食糧農業機関(FAO)が提唱する世界農業遺産(GIAHS)に認定された。
世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し、受け継がれてきた伝統的な農林水産業と、育まれた文化、景観、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システムを認定する仕組み。現在、世界で65地域、うち日本国内13地域が認定されている。
今回認定された「琵琶湖システム」は、琵琶湖の固有種ニゴロブナなどの湖魚が遡上(そじょう)、産卵し、稚魚が育つ水田「魚のゆりかご水田」などの琵琶湖周辺の農業と、湖魚の生態を利用し、必要な分だけ捕獲する「エリ漁」、琵琶湖から河川に遡上して産卵するビワマスやアユなどの湖魚の繁殖環境の保全にもつながる山林緑化や水源林の保全、農薬・化学肥料を減らし、農業廃水対策をした「環境こだわり農産物」、湖魚と米で作るふなずしなどの食文化、滋賀の伝統野菜など琵琶湖を中心とした生物と共存する持続的な農林水産業の仕組み。
滋賀県は、2016(平成28)年に世界農業遺産プロジェクト推進会議を設置し、認定申請に向けた検討を始めた。2018(平成30)年に「琵琶湖と共生する滋賀の農林水産業推進協議会」を設立。シンポジウムやモニターツアーなどを実施し、「世界農業遺産に向けた認定申請の承認」および「日本農業遺産の認定」の申請書を農林水産省へ提出。2019(平成31)年2月に日本農業遺産に認定され、世界農業遺産に向けた認定申請の承認も発表された。2019年にFAOに世界農業遺産認定申請書を提出。今年6月16日、新型コロナウイルスの影響で延期となっていたFAOの現地調査員パトリシア・ブスタマンテさんによる琵琶湖のエリ漁や沖島の漁業、魚のゆりかご水田の視察が行われ、7月18日の審査会で琵琶湖システムの認定が決定した。
世界農業遺産に認定されることで、滋賀県固有の農林水産業の価値が世界的に認められ、滋賀県の農林水産物のブランド力の向上や、体験型ツーリズムなどの観光推進などの地域経済の活性化が期待されるという。
滋賀県農政水産部農政課の担当者は「世界農業遺産認定を国内外に発信し、農林水産業と地域活性化の契機とし、琵琶湖システムを次の世代への贈り物としてしっかりと引き継いでいきたい」と話した。