小さな水族館「びわこベース」(大津市木戸)が7月30日、オープンした。
自然写真家の関慎太郎さんが個人で運営する水族館で、琵琶湖岸のカフェとして使われていた建物をリフォームし、琵琶湖の生き物や日本の希少生物など100種以上の淡水生物を展示する。金曜~日曜のみの開館で、オープンから10日間で300人が来館した。
工事で生息場所を失った淡水生物を一時的に保護し、繁殖させ、元の場所に戻す「生息域外保全センター」としての役割も果たしている。現在は神戸で工事をしている場所から希少生物のセトウチサンショウウオとミナミメダカを保護し、館内で展示しながら飼育と繁殖に取り組んでいる。工事と並行して、元の場所に生き物が生息できる場所を作る「生息域内保全」も行っている。関さんは「ほかの場所から取ってきて増やすのではなく、元からいた生き物を元の場所に戻すことが重要。工事期間中に繁殖させ、工場内に作るビオトープや生息域内保全を行っている場所に戻す」と話す。
関さんは琵琶湖博物館の開館時から飼育員として勤務した。京都水族館の立ち上げにも関わり、副館長を7年間務めた。自然写真家として幼児向けの生き物の成長が分かる写真絵本や図鑑など「子どもが生き物を好きになれるような本」を70冊以上出版している。
「水族館では5年ほどでスタッフが入れ替わってしまい、保全にかける資金も減ってきている。このままでは保全活動が途切れてしまう。ベースを作らなくては」と強く感じた関さんは、生息域外保全センターの機能を持つ水族館を開館した。
「保全が見える場所」として、時期によっては人工授精したシャーレや生後すぐのビワコオオナマズなどを展示している。関さんは「子どもたちにはこんなに小さなビワコオオナマズが大きくなる過程を見ることで『生き物を守ろう』と感じてもらいたい」と話す。来館した小学生は小さなビワコオオナマズを見ながらノートに絵を描き、餌を食べる姿を間近で観察した。
後継者を育てることを目的に、生物について学ぶ学生が人工授精や飼育、来館者への対応を学ぶ場としても提供している。関さんは「学生たちは学校で知識を学ぶことはできるが、人工授精を実際に体験する機会は少ない。ここでは学生が実際に繁殖させた生き物を、責任を持って大きく育てるまでを体験してもらう」と話す。
今後は兵庫県に生物を保全するベースを作る予定。関さんは「希少生物の保全と、水族館勤務で学んだ技術を継承するために後継者を育てたい。全国各地にベースを作り、生き物の保全活動と生き物好きを増やす取り組みをしたい」と意気込む。
開館日は金曜~日曜。開館時間は10時~17時。入館料は18歳以上300円。月に1回サイエンスカフェを実施している。