「成瀬は天下を取りにいく」ラッピング電車の運行が8月7日、京阪電車大津線内の石山坂本線で始まった。
「成瀬は天下を取りにいく」は大津市を舞台にした青春小説。中学2年の主人公「成瀬あかり」が百貨店閉店まで毎日、地元ニュース中継に映り込もうとする「ありがとう西武大津店」、成瀬が県外から来た他校の生徒をもてなそうとミシガンクルーズに乗船する「レッツゴーミシガン」などが収録されている。4月に「第21回全国書店員が選んだいちばん!売りたい本2024年本屋大賞」を受賞した。
2両編成の600系車両外装に「成瀬は天下を取りにいく」と続編の「成瀬は信じた道をいく」の表紙をモチーフにしたイラストをラッピングした。1両目には、西武大津店を背景に西武ライオンズのユニホームを着た成瀬あかりが描かれている。2両目は大津港と観光船ミシガンを背景にびわ湖大津観光大使になった成瀬と、成瀬の親友である島崎みゆきが描かれている。石山寺・坂本比叡山口間を1日最大14往復する。
石山寺駅でラッピング電車を見た著者の宮島未奈さんは「西武大津店とミシガンは私が撮影した写真を基にイラストにしてもらった。思っていたより大きくて迫力がある」と驚いていた。西武大津店の写真は閉店の3日前に撮影したという。「バイクも車も通行人もそのまま描かれていて、描かれている人に会ってみたいと思うくらい。建物はもうなくなったので、本当に撮っておいてよかった」とも。「『成瀬は信じた道をいく』の登場人物の篠原かれんちゃんは撮り鉄。ラッピング電車にきっと喜んでくれるはず」と笑顔を見せる。JR膳所駅にも表紙がモチーフの大きな看板があることや、成瀬と島崎が「びわ湖マラソン2025」のメインビジュアルにも採用されていることについては、「そこまで見据えて小説を書いていなかったが、結果的に広がっている。物語から飛び出していく不安はあるが、ありがたいこと」と話す。
宮島さんは「夏休みにラッピング電車を見に来て、成瀬と島崎と一緒に記念撮影したり電車に乗って大津を観光したりしてもらえれば。近江神宮やミシガンはもちろん、小説に度々登場するときめき坂も見てもらいたい」と呼びかける。
運行は2025年2月9日まで。運行に合わせて現在、「びわ湖大津観光大使『成瀬あかり』が案内!京阪電車でめぐる沿線スタンプラリー」が開催されている。10月31日まで。