
落語の演目にまつわる美術作品を展示する「落語であーっ!と展」が4月8日、滋賀県立美術館(大津市瀬田南大萱町)で始まった。
23題の落語の紹介と共に、演目の中に登場する物や景色などに関連付けた同館所蔵の絵画、工芸、立体作品などの美術品を展示する。落語「近江八景」と共に野村文拳の「近江八景図」を、落語「動物園」と共にアールブリュット(生の芸術)作品の大辻良介「ライオン」を展示。落語「抜け雀」のコーナーでは、縦161.3センチ、横365.6センチのびょうぶに265羽のスズメが描かれた長谷川玉峰の「群雀(ぐんじゃく)図」を展示している。落語「井戸の茶碗(ちゃわん)」のコーナーでは、北村美術館(京都市)所蔵の「井戸茶碗 銘 雨雲」を展示している。
企画展の副題に「そこまでやっちゃう?落語と美術の無理矢理コラボレーション」と付け、落語「つる」コーナーには、「つるっとしている」という理由でコンスタンティン・ブランクーシの立体作品「空間の鳥」を展示している。落語マニアでもあるという館長の保坂健二朗さんは「落語の中には滋賀が登場することも多いが、滋賀の人が知らないことをもったいないと感じ、いつか落語と美術の展覧会をしたいと思っていた。所蔵品の中には『近江八景』も『群雀図』もあるので、思い切って開催を決めた」と振り返る。「ブランクーシとびょうぶが並ぶ展覧会は普通ではあり得ないが、落語のストーリーがあるから違和感がない。無理やりな結果、新しい展示になった」と話す。
落語の紹介文は滋賀県出身の江戸落語の真打ち・三遊亭わん丈さんが監修を担当した。会場内では、わん丈さんが今回の展示のために収録した「近江八景」「つる」「牛ほめ」「元犬」「やかん」の5つの演目の音声を放送。わん丈さんは「美術が好きな人に落語を知ってもらうきっかけにもなる」と喜ぶ。
井戸茶碗の展示を見たわん丈さんは「本物の井戸茶碗を見たのは初めて。今後、落語をする時に茶碗を持つ手の形も変わるだろう」と話した。落語「あたま山」を短編アニメーションにした山村浩二監督の映像を見たわん丈さんは「扇子と手拭いだけで人の想像力を引き出すのが落語。その中でも『あたま山』はシュールで映像化しづらい作品。よく映像化できたと思う」と感心した。
担当学芸員の山田由希代さんは「落語に登場する人、物、風景と当館のコレクションをリンクさせ、いかに楽しく見せるかを考えた。落語も美術作品も楽しんでもらえれば」と呼びかける。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館(5月5日・6日は開館、7日休館)。観覧料は大人=950円、高校生・大学生=600円、小・中学生=400円。6月8日まで。5月11日には三遊亭わん丈さん、25日には同じく滋賀県出身で上方落語家の桂三度さんの独演会を開催する。