琵琶湖博物館が3期6年にわたるリニューアルを終え、10月10日にグランドオープンする。当初は7月にグランドオープンの予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期になった。
琵琶湖博物館は1996(平成8)年にオープンした「湖と人間」をテーマにした総合博物館。日本では珍しい淡水水族展示があり、観光や環境学習の場として24年間に1100万人以上が来館したが、2006(平成18)年をピークに来館者数は減少傾向に。「展示が代わり映えしない」「情報が最新でない」といった意見が増加していた。
参加型、体験型の展示を増やし、対話と交流を促し、次代を担う人が育つ博物館となることを目指して、2015(平成27)年から29億円かけてリニューアルを開始した。2016(平成28)年に第1期としてC展示室と水族展示をリニューアル。バイカルアザラシやカヤネズミなどの展示を始めた。2018(平成30)年の第2期リニューアルでは子ども向けのディスカバリールームに加え、大人が学べる「大人のディスカバリールーム」、琵琶湖に突き出した空中遊歩道「樹冠トレイル」を新設した。
第3期として琵琶湖の400万年の歴史を紹介するA展示室と、人と自然の関りを展示するB展示室をリニューアルした。A展示室では400万年前の中国にいたツダンスキーゾウの骨格化石と生体を復元した「半身半骨」の標本を展示する。ハンドルを回して琵琶湖の場所が変化したことを体感できる展示や、地層の展示、花粉の化石から過去の気候が分かることを示す展示などで琵琶湖の歴史を知ることができる。学芸員の里口保文さんは「最新の研究成果を分かりやすく体感できるように展示した」と話す。
B展示室は森・水辺・湖・里を舞台に、人が自然とどのように関わってきたかを展示する。自然災害を起こすといわれ、自然の恐ろしさを表現する象徴として描かれてきた龍をナビゲーターに紹介する。森との関りを表現したジオラマの横には、「木ぃ切って、石までとって…森のうなったら(なくなったら)どうすんねん?」と龍のつぶやきが展示されている。学芸員の渡部圭一さんは「人と自然との関りは、自然にとってはありがたいことではないこともあり、龍がぼやくことで自然からのメッセージを伝えている」と話す。琵琶湖特有の丸子船の展示では、ARアプリで帆を立てて走る姿を再現できる。
高橋啓一館長は「琵琶湖は近畿の水がめとしての価値だけでなく、日本で唯一の古代湖として歴史的な価値もある。それを『びわこのちから』と表現し、琵琶湖博物館のコンセプトにした。目的は、博物館に来館してもらうことだけでなく、琵琶湖地域にたくさんの人に来てもらうこと。博物館は入り口。琵琶湖の面白いところ、価値を知ってもらって、出て行く人が琵琶湖を自分の目で見て感じてほしい。出口は一人一人が持っている。そのお手伝いができれば。身の回りに面白いものがあることを知っていただきたい」と呼び掛ける。
スロープの設置、触れて認識できる展示、点字ブロックのほか、ストレッチャー利用者に展示が見えやすいように鏡を設置し、鏡文字で説明文を入れるなど、ユニバーサルデザインに配慮して館内を整備した。
10日は10時に開館し、11時からオープンセレモニーを開催。セレモニー後にA展示室、B展示室に入館できる。10日から来館は完全予約制になる。琵琶湖博物館ホームページから予約できる。
開館時間は10時~16時30分。入館料は大人=800円、大学生・高校生=450円。中学生以下無料。新型コロナウイルス感染予防のため、館内の人数を500人に制限していたが、A・B展示室のオープンで館内面積が増えたことや新たな政府の基準の適応により、10日から1400人に拡大する予定。一部の体感できる展示は、新型コロナウイルス対策として休止している場合もある。