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福島の今に思い寄せてードキュメンタリー映画「普通の生活」、野洲で上映会

「普通の生活」上映会前のトークショーで思いを語る吉田監督(左から2人目)

「普通の生活」上映会前のトークショーで思いを語る吉田監督(左から2人目)

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 関西で初めてとなるドキュメンタリー映画「普通の生活」(吉田泰三監督)の上映会が10月8日、野洲文化ホール(野洲市)で開催された。700人を超える来場者が詰め掛け、「福島の今」を見つめた。

「普通の生活」滋賀上映会。ロビーでは写真展や関連書籍の販売、募金の受付なども行われた。

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 同作品は原発事故後の福島の人たちの生活を描いたドキュメンタリー映画。吉田監督は東日本大震災後の昨年4月からボランティア活動をしながら福島の人々の日常の姿を映像に記録してきた。9月にも福島に入り約50人を撮影、合計約30時間の映像を1本の作品にまとめ上げた。

 「福島の今を忘れてほしくない」と、同映画実行委員長で「滋賀県内被害者の会」代表の遠藤正一さんが中心となって6月から上映準備を進めてきた。

 吉田監督と遠藤さんは「滋賀」が縁で以前から親交があった。吉田監督は野洲市にある重症心身障害児者施設「第2びわ湖学園」のドキュメンタリー映画「わたしの季節」(小林茂監督)で助監督兼カメラマンを務めた。時を同じくして遠藤さんも「第2びわ湖学園」に勤務していた。遠藤さんはその後、故郷の福島に戻り昨年4月に介護事業を立ち上げる予定だったが震災で家族とともに野洲市への避難を選択した。「普通の生活」製作に当たっては福島県郡山市の事務所を提供するなど協力してきた。

 上映に先立ち、遠藤さん司会の下、吉田監督、映画を製作したネイバーズ代表の吉田三千代さん、映画に出演した斎藤夕香さんによるトークショーが行われた。吉田監督は「映画という切り口で福島の人の声を声高ではなく、静かに伝えたい」と話す。斎藤さんは今年1月、飯野町から子ども3人と京都に避難、高校生の長女は福島で祖父母と生活、夫は海外赴任中。「除染除染の毎日でみんな疲れきっている日々。放射能に対する周囲との温度差で友達とも家族間でさえも話が合わなくなり辛かった」と福島での日々を振り返る。昨年2月、インドネシアなど海外の障害者支援を行うためネイバーズを立ち上げた吉田さん。「ネイバーズ立ち上げ直後の震災で手を差し伸べるべきネイバーズ(隣人)は福島の人々となった」と語った。

 上映終了後、遠藤さん、吉田監督、斎藤さんの3人が再び舞台に登壇。会場からの質問に熱心に答えた。吉田監督は「他の被災地では一日一日復興への歩みが人々の希望になりえるが、福島は違う。原発事故で一枚岩になれない複雑な状況。話すことも歯切れが悪い。歯切れが悪くていい。ただただ福島の人々の気持ちに寄り添う事が大切では。テレビで見せつけられた大震災の悲惨な映像とは違う、福島の人々の日常のつぶやきに耳を傾けてほしい」と語る。「大きなホールでの上映を最初はみんなに反対されたが、会場を埋め尽くす700人を超える方に映画を見てもらってうれしい。多くの人々の協力に感謝したい。滋賀県内はじめ京都や岐阜など他の地域での上映についても尋ねられた」と遠藤さん。

 米原から来たという村上悟さんは「映画の中であるお母さんが語った『今の大人ができることは、ちゃんと考えること』という言葉が印象に残った。スピードスピードの時代の中で時には立ち止まって『考える』事も大切なことと感じた」と感想を述べた。

 ブルーレイディスク、DVD素材のレンタルによる上映会の企画も受け付けている。詳しくはネイバース(TEL/FAX 011-612-3021)まで。

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