2026/05/13
Patentix株式会社
Patentix 株式会社(以下「当社」)は、株式会社ジェイテクトサーモシステムと共同で6インチ対応の新規成膜装置を開発・製造し、次世代パワー半導体材料のルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)の単結晶膜をSi基板上に成膜することに成功しました。
【背景】
ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも大きなバンドギャップ(4.68eV)を有する次世代のパワー半導体材料であり、電力変換に伴うエネルギー損失の低減が期待されています。
r-GeO2パワーデバイス実用化には、パワーデバイスの生産ラインに適合する6インチ以上の大口径r-GeO2基板の実現が必要不可欠です。当社は、r-GeO2の成膜に適した独自の成膜手法であるPhantomSVD法を開発し、r-TiO2基板全面に単結晶r-GeO2膜の成膜を実現するなど、成膜技術の研究開発を進めておりました。当社は、2025年7月のプレスリリースにてSi基板上にr-GeO2膜の作製成功を発表しておりましたが、今回、パワーデバイス応用に不可欠なr-GeO2単結晶膜の成膜に成功しました。
【成果】
前回の発表では、Si基板上へのr-GeO2の成膜という「基盤技術」を確立しました。しかし、OFF状態で高い電圧が加わってもデバイスが破壊されず、またリーク電流が流れないことが要求されるパワーデバイスを実現するには、原子が規則正しく並んだ単結晶r-GeO2膜を用いてデバイスを作製することが必須条件となります。
今回、当社が独自に開発した成膜手法(「チムニー法」と命名)を採用した6インチ基板対応の新規成膜装置を株式会社ジェイテクトサーモシステムと共同で製造しました。製造した「チムニー法」成膜装置を用いることで、r-GeO2と結晶構造と格子定数が大きく異なるSi基板上においてr-GeO2の単結晶膜を成膜することに成功しました。
図に示す通り、電子背後散乱回折(EBSD)法による解析を行ったところ、Si基板上成膜されたr-GeO2膜全体が同一の結晶方位を有していること、即ちSi 基板上の単結晶r-GeO2膜のヘテロエピタキシャル成長に成功したことが確認されました。

図: Si基板上に導電性のバッファー層を介して成膜したr-GeO2単結晶膜のEBSD像
【EBSD解析の結果】
1. 結晶方位の一致: 膜全体において結晶軸が高度に揃っており、多結晶構造で見られる結晶粒界が存在しないことを確認。
2. 高い逆極点図(IPF)マッピング精度: 測定領域全体で均一な色相を示し、高い結晶品質を示しています。
当社は、結晶構造が大きく異なるSi基板の上にr-GeO2結晶膜の成膜を実現するために、導電性バッファー層を採用しています。導電性バッファー層を採用することで、パワーデバイスとして一般的な縦型のデバイス構造を容易に実現できることが期待されています。
縦型デバイスに適した導電性バッファー層技術と、これまで蓄積してきたr-GeO2成膜技術を組み合わせることで、“GeO2 on Si基板”を実現し、安価な製造コストと高性能な縦型パワーデバイスの両立を可能とする次世代半導体基板材料の社会実装を目指します。
【将来展望】
Patentix社は早期市場投入を実現するために、今回の単結晶膜r-GeO2成膜技術を用いて、パワーデバイスの生産ラインに適合する6インチサイズの大口径r-GeO2基板の試作を実施する予定です。また、r-GeO2単結晶膜の高品質化を進め、GeO2 on Si基板を用いた完全縦型のショットキーバリアダイオード(SBD)や電界効果トランジスタ(FET)の試作・評価を進めます。
以上