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大津の大学、キャンパス全体で作品展示 虚構新聞など「現実と虚構を行き来」

学生が作った「虚構新聞」を読む来場者

学生が作った「虚構新聞」を読む来場者

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 キャンパス内各所でアート作品を展示するセイアンアーツアテンション16「Error of Reality」が現在、成安造形大学(大津市仰木の里東4)で開催されている。

学生が作った虚構新聞をキャンパス内各所に展示

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 同大学は2010(平成22)年から「【キャンパスが美術館】」と銘打ち、学内に点在するギャラリー全てを使った展覧会を毎年開催している。今年は「Error of Reality」をテーマにアート作品を展示。現実世界を捉える感覚や認識に少しエラーを起こさせ現実と虚構の間を行き来するユニークな作品という5組を紹介する。

 入り口横の「バスストップギャラリー」と学内各所に虚構新聞社社主のUKさんと学生が手がけた「虚構新聞」の号外を展示。「大量のタピオカが降り注いだ」「AIイラストは実は人間が描いている」「リアルきのこの山が発見された」「夢の中での登校を大学が承認した」など、学生のアイデアを基に「虚構新聞」を作り、「リアルきのこの山」「アボカドから真珠」などは模型も一緒に学内に展示している。情報デザイン領域准教授の真下武久さんの授業「情報デザイン演習」を受講した学生32人のアイデアを客員教授のUKさんがブラッシュアップした。

 「虚構新聞」は、「真実を伝えない新聞」というパロディー的な立場からユーモアのある虚構の記事を配信しているサイト。真下さんは「真偽の分からない大量の情報が入り乱れる中、情報を正しく受け取ることが難しくなっている。情報にどう触れるべきかを多面的に捉える必要がある。フェイクニュースを実現化した作品も展示することで、偽物だと分かっていても想像力をかき立てられるのではないか。純粋な面白さを体験してもらいたい」と話す。

 同大学卒業生の谷平博さんの作品は、葉っぱに覆われた谷平さん自身が島根の漁港に立つ姿を鉛筆画にした「日本海沿岸に佇(たたず)む人の形をした疑問符」など。谷平さんは2004(平成16)年の在学時に勃発したイラク戦争に不安を感じて作品を作り始めた。同大学学芸員の田中真吾さんは「外から来たよく分からない生物がリアルな漁港や山奥に立ち、現実とフィクションの間にいるような気分になる作品」と評価する。守山市から来た女性は「見た瞬間に心がざわざわした」と話した。

 平瀬ミキさんの「Translucent Objects(トランスルーセント オブジェクツ)」は、手前と奥にウェブカメラを設置し、透明度50%の映像を重ね合わせることで実際の空間にはない物体を映し出す映像作品。会場には撮影時と同じ状態にセットされた「初期撮影実験セット」があり、来場者は、積み木を動かしてどのように映るかを体感することができる。田中さんは「虚像が重なると実像になる。現実とフィクションがまぜこぜになる瞬間に、普段とは違う視点を持ってもらえると思う。言葉だけでなく身体で理解できる作品」と話す。

 今村遼佑さんの作品で、窓から差し込む光を鏡に反射させ、床に置いたノートや皿などに映す「降り落ちるもの」や、同大学卒業生の垣本泰美さんがスイスの伝説が残る場所で撮影した写真作品も展示する。

 真下さんは「アーティストの作品にはそれぞれのテーマがあるので、まずは純粋に不思議さや面白さを味わってもらってから、虚構と現実のあいまいさを知って、もう一度見てもらうと『味変』ではないが、また違った見方ができる。難しいことを考えずに見てもらえれば」と呼びかける。

 開催時間は11時~17時。入場無料。日曜・月曜・祝日休催。

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