プレスリリース

湿度・酸素濃度を同時制御した加熱発生ガス分析サービスを提供開始

リリース発行企業:株式会社東レリサーチセンター

情報提供:

【要旨】

株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目7番2号、代表取締役社長:真壁芳樹、以下「TRC」)は、湿度および酸素濃度を安定して同時制御した雰囲気下での加熱発生ガス分析(TPD-MS(※))サービスの提供を開始しました。
加熱時に発生するガスの挙動は温度のみならず、湿度や酸素濃度といった使用環境条件の影響を大きく受けます。しかし、水分が質量分析計の検出安定性に影響を与えることや、酸素存在下での反応制御の難しさなどから、これらを同時に制御しながら安定かつ再現性よく分析することは技術的に困難でした。TRCは独自の雰囲気制御技術をTPD-MSに統合することで、湿度・酸素濃度を精密に制御した状態で加熱発生ガスを測定することを可能とし、大気圧下など実使用環境を模擬した分析を実現しました。
本サービスにより、製品が高温条件下に曝された際に発生する微量ガスの種類や発生温度域を把握でき、材料劣化の兆候把握や、人体・周辺環境への影響リスクの推定に活用できます。特に蓄電材料分野においては、充放電に伴う発熱や外部環境(湿度・酸素)の影響により材料劣化やガス発生挙動が大きく変化し、安全性リスクに直結することから、本サービスの有用性が高いと考えられます。また、電子部材、複合材料、樹脂、接着剤など幅広い材料分野において、材料選定や設計段階での安全設計の高度化および評価期間の短縮への貢献が期待されます。

【背景】

材料の高機能化・高付加価値化が進む中、製造工程や使用環境における熱の影響は、製品の安全性や信頼性を左右する重要な要素となっています。材料は加熱により様々なガスを放出し、これらは材料自身の劣化だけでなく周辺部材や使用環境に対するリスク要因となる可能性があります。そのため、発生ガスの評価はリスク回避のための重要な手段です。
発生ガスの挙動は温度に加え、湿度や酸素濃度などの雰囲気によって大きく変化します。しかし、これまで湿度と酸素濃度を同時に制御しながら、測定中の雰囲気安定性と検出器への影響抑制を両立させることが難しく、再現性の高い分析は困難でした。

【技術と分析例】

TRCは、湿度制御、酸素供給、試料導入条件などの要素技術を最適化した独自の雰囲気制御技術を開発しました。本技術を加熱発生ガス分析システム(TPD-MS)に組み込むことで、湿度・酸素濃度を同時制御した発生ガス分析を実現しています。
本技術の有効性を示す一例として、全固体電池用の硫化物系電解質を想定した材料の加熱発生ガス分析結果を図1に示します。酸素濃度約20%の条件において、室温における相対湿度を0%(乾燥条件)および約40%の条件で比較した結果、湿度存在下では低温域(室温~200℃程度)においても、人体や環境への影響が懸念される硫化水素が微量発生している挙動を捉えることができました。また、高温域(200℃以上)における熱分解生成ガスの挙動にも雰囲気依存性が明確に現れており、本技術が材料劣化プロセスの把握にも有効であることが示されました。

図1 酸素濃度20%・相対湿度0%条件下と、酸素濃度20%・相対湿度40%条件下における発生ガス挙動比較。

湿度の有無により、低温域でのガス発生挙動および高温域の分解挙動が大きく変化する。
※硫化水素は二酸化硫黄と比較して信号強度が低いために、視認性向上のために20倍スケールで表示。

【今後の展望】

本サービスは蓄電材料分野に加え、電子部材、樹脂、複合材料、接着剤など幅広い材料に適用可能です。TRCは加熱発生ガス分析に関する長年の知見を活かし、評価対象や目的に応じた最適な条件の提案、独自の測定手法の構築を通じて、先端材料の開発支援と課題解決に貢献してまいります。

【用語説明】

※TPD-MS:Temperature Programmed Desorption Mass Spectrometry
温度制御付き加熱装置に質量分析計(MS)を直結し、加熱時に試料から発生する気体の質量数ごとの濃度変化を温度の関数として追跡する手法。定性分析に加え、標準ガスを用いることで各種発生ガスの概算定量も可能。

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