滋賀県草津市、JR草津駅前にある株式会社テナントショップは「貸し手よし」「借り手よし」「借り手の顧客よし」の「三方よし まちづくり」を目指し、テナント仲介実績が1300件以上と県内随一。同社の魅力や今後の展開を伺いました。

テナント需要にビジネスの可能性

　株式会社テナントショップは、2008（平成20）年に滋賀県初のテナント物件専門の仲介会社として創業しました。社長の水野清治さんは「友人から得意先の美容室がテナント物件を探していると相談を受け、テナントの需要が多くあると気付き、当時は県内に店舗を専門に仲介する不動産業者がなく、ビジネスの可能性を感じました」と創業のきっかけを語ります。

不安の中で見つけたテナントビジネスのベース

　住宅会社を退職し、店舗を専門に仲介する会社を創業するも、最初は知人の事務所の片隅を間借りし、デスクとプリンターだけのスタートでした。水野さんは「今日も売り上げが無かった。恐らく明日も無い。頑張っているが、この先いつまでこの状態が続くのか、と後ろ向きの考えしか浮かびませんでした。ただ、独立創業される方は多かれ少なかれ、このような心境になられるのではないでしょうか。そのような不安の中で起業したことが私のビジネスのベースにあります」と当時を振り返ります。創業する人の不安な気持ちが分かるからこそ、テナント物件探しの相談に来られる方には「繁盛する店をつくるお手伝いをする」「もうけが見えない店はやらない方がいい」という姿勢で対応しているとのことです。

大切にしているのは「利用者の目線」

　水野さんは、テナントを探しているお客さんのために自転車で草津市内をくまなく探して回り、多種多様な種類のテナント物件を取り扱うようになります。「さまざまなテナント物件を取り扱う中で、店舗ビジネスの概念が変わってきました」さらには、「業種や業態によって繁盛のポイントとなる条件が異なります。都会とは違い、滋賀県では、必ずしも駅近くにあるおしゃれな店舗がもうかるテナント物件とは限らないと気付きました。空き物件にどんなお店が入れば、地域の皆さんに喜んでいただけるかを考え、スタッフが顧客、利用者の目線で紹介するようにしています」と余念がありません。

　物件の所有オーナーに対しては、資産であるテナント物件の特徴を知り、ターゲットを明確に見定め、長く安定的に貸せる状態になるように提案。ここにも「三方よし」の精神が息づいています。

　本社がある草津駅周辺のお店の出店を手掛けたことで、地域がにぎわい、活気づいてきました。水野さんは「まちづくりの一端を担っていると実感しています」と話します。新たにビジネスを始める人を後押しするため、隣接するビルに本社オフィスを移転し、空いた2階にコワーキングスペース「草津BASE」を作りました。水野さんは「当施設を通じて、地域のコミュニティーの創造や、地域の新たなつながりや新規ビジネスの創出が活性化すれば」と期待を寄せます。

「同じ志を県外へ」事業用不動産専門のポータルサイト

　水野さんは「不動産の勉強を重ね、情熱を持って取り組めば、誰でもテナント物件の専門家になれる。この志を全国にも広めたい」と2011（平成23）年から事業用不動産専門のポータルサイト「テナントショップネットワーク」の運営をスタート。当初は全国に数社だった「テナントショップネットワーク」を利用している不動産業者が現在は150店舗を超え、登録件数は専門サイトとしては日本最大級。テナント物件を専門に取り扱うノウハウを学ぶため、全国の不動産業者がテナントショップに研修に訪れることも。「各地域で収益を上げながら、まちづくりに貢献されています」とのこと。

これからの「テナントビジネス」

　「情報インフラが未熟で、競争相手が少ないが市場規模は大きい。未成熟であるがゆえに、可能性が大きい。コロナ禍では、不景気にこそ起こる需要に目を向けて、生き残る不動産ビジネスをしていきたいと思っています。テナントビジネスは日々あらゆる業種・業態に適合する物件情報を取得し、データベース化することにより、目まぐるしく変化する需要に敏感に対応することができます」と水野さんはテナントビジネスの可能性を感じています。

　「半年以上も物件を探し続けていたお客さまが、私が提案した物件を気に入ってくださったときのうれしそうなご様子や、その後のご経営が順調であることを聞くと、この仕事をやっていて良かったという喜びを感じます。単なる物件紹介屋ではなく、不動産のプロとして、貸し主、借り主、売り主、買い主に安心してお任せいただけるような存在になりたい。そんな思いを胸に、地域で一番のテナント専門の不動産会社を目指して仕事に励んでいきたい」との決意を伺いました。